サプライヤー戦略(7)発注数がもたらすサプライヤーのリスク増減-5
ここで、やや強引ですが、標準偏差のないバイヤー企業と比べてみましょう。標準偏差がないバイヤー企業とは毎年決まった数量を確実に発注するところです。「たくさん」「安定した発注」とは、かつてより安価なコストを実現するために必須だといわれています。その効果を見てみようというものです。
サプライヤーの固定費が1億円だったとしましょう。すると、計算式は、
- あなた :1億円÷232,249個≒430円
- 標準偏差ゼロ企業 :1億円÷300,000個≒333円
となります。あなたが430円で調達するところ、そのいっぽうで静的な発注量を与え続ける企業は333円と23%ほど安価に買えてしまいます。これが、安定発注をした際に実現する「コスト優位性」の正体なのです。
もちろん、この例では標準偏差の一区間を想定していました。それ以下(それ以上)のブレもじゅうぶん「ありうる」バイヤー企業に対しては、サプライヤーもより安全を確保した見積りを作成せねばならなくなるでしょう。
受発注の安定とは、サプライヤーへの便益供与ではなく、きわめてバイヤー企業サイドのコスト優位性創出の源泉だったのです。