社会の中で誰かに選ばれるということ(番組「スッキリ」The First)

日本テレビ「スッキリ」で実施されている男性グループオーディションのThe Firstについて書いておきたい。

当オーディションは10代~20代の男性らが、デビューを目指して奮闘するものだ。以下、このオーディションを観ている人にのみ記す。

若い、というのは脆い(もろい)、という言葉の同義だ。

脆いだけに優しく、若い器には入りきれない悩みを抱えた人もいる。同世代では、自分よりも早く、花を咲かせる人がいる。つまり、自分より早く活躍する人がいる、という意味だ。

幾枝にも重なった蕾(つぼみ)が散ろうとしているのに、なぜか同年代の誰かは、ずっと先に成功して花を咲かしている。

若いときに、何かを諦めると、自分がどうしていいかわからない。傷口から噴出する血と涙をどこに流していいのか検討もつかない。

さらに、他者が成功しているだけでも悔しいのに、自分が「失格」という形の烙印を押されるときもある。

自分が失格になってしまったときに、自分を落とした相手を嫌いになってしまう。もしかすると、相手を嫌いになりたいと思う気持ちは、相手への最も強い愛の裏返しなのかもしれない。

おそらく「The First」を観ている人たちの多くは、人生をなんらか諦めたり、現状を肯定しつつ日常を繰り返している。きっと、「The First」のオーディション参加者たちに、自分の「あったかもしれない人生」を重ねているに違いない。

私たちはオーディション参加者、ボーイズの美しい目を見ている。そしていくつかのきらきらする目に出会う。

その目を見るたびに、うらやましく思う。まだ、多くの経験をしていない彼らは、これからいくつもの、心動かす経験に巡り合う機会があるだろう。そして心躍る経験だけではなく、苦しくなる経験も数多く経験するに違いない。

「The First」では、「To The First」という曲をメンバーが歌う。そこにはライムだけではなく、メンバーの骨と骨をぶつかり合わせるかのようなきしみ音さえ聞こえる。SKY-HIさんの旋律は、単なる歌ではなく、人生の高揚と、そしてさまよったあげく「ここしか人生の選択肢がない」というボーイズの戦慄のようにも聞こえる。

美しさを感じるとは、ただただ個人が輝くときに感じるわけではない。行き場のない悲しさがゆえに美しさを感じられることもある。

私たちは、「The First」を見て感動するとき、
・選ばれ残り続けた若者たちの将来を案ずること
・選ばれなかった若者たちの現在を案ずること
この両方に源泉があるように感じられる。

「The First」(最初)が視聴者の女性たちに感動を呼び起こすのは、何よりもボーイズ(息子たち)が生まれた際に女性たちが最初(The First)に抱く母性と無関係でないように思うのだ。

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