臆病者のためのコンサルタント起業術①

・需要の見極め

コンサルタントとして独立するときにもっとも考えなければいけないのは、その分野に需要があるかということです。

コンサルタントの場合は費用がかからないと言われます。家賃はありますが、それも自宅間オフィスとして活動すれば問題ありません。請求書や資料作成などを手伝ってくれる人がいればいいですが、それも自分でやろうと思えばできます。

しかし、売り上げ自体はどうやっても自由に捻出することができません。したがって当たり前の事ですが、お客様から仕事をもらうということなしにはコンサルタントは成り立たないのです。

もちろんお客様がいたらさきほど述べた通り、コンサルタントというビジネスは有利です。なぜならば変動費がかからず在庫が要らないからです。そして、逆もしかりです。

私も最初のころはホームページを作って電話を引いたのですが、まったく電話がかかってきませんでした。そして問い合わせが来ないのでびっくりしてしまいました。

少なからぬ人はホームページと電話があったら問い合わせが来ると思っています。が、ほとんどの場合そのようなことはありません。だから私も自分の携帯電話や公衆電話から本当に自分のオフィスにつながるかどうか確認したものです。そしてホームページの問い合わせボタンが正常に機能しているか何度も確認しました。

だから何よりもお客さんの存在有無の見極めが重要なのです。

・自分ができるか

そして、どんなに伸びている分野であっても、自分がコンサルタントとして参入できなければ仕方がありません。

考えるべきは「自分ができるのか」「できないのか」という2つの条件に加えて、「自分がその業界を熟知しているか」あるいは「自分がこれまで経験のない分野なのか」、その4つのマトリクスです。

自分がこれまでやったことのない(経験のない)分野でコンサルタントは基本的にできません。よく「ゼロから勉強してその分野に入ります!」という人がいます。たとえば、行政書士の資格をとって独立するとか。それはかなり厳しいと思った方が良いでしょう。

もっとも良いのは、自分が経験ある分野のコンサルタントをして、そしてこれまでコンサルタントが不在の、伸び盛りの業界に行くことです。もちろん、ニッチなマーケットでよければ、コンサルタントが不在の成熟市場でもいいかもしれません。そのどちらにしてもお客様がいるかどうかに加えて、自分自身の経験がもっとも重要な要因になります。

・コンサルタントの特徴
そして、コンサルタントというのは会社員とは違いますから年功序列で給料が上がっていきません。

自分が仕事をとってくるか、とって来ないかが全てです。

ただしコンサルタントのやりがいはあります。徹夜するかもしれませんけれども、それが面白いのです。おそらく面白いと思わない人はコンサルタントの世界に入ってこない方が良いでしょう。独立したコンサルタントは、会社の責任にすることができません。すべてが自分の声です。しかしそれが面白いと思いませんか。

・コンサルタントの正当性

そして、コンサルタントとして独立するときに考えておかなければならないのは、「今では、どんな小さな会社でもコンプライアンスが重視されている」ということです。したがってあなたがコンサルタントとしてやろうとしている仕事は、法律と照らし合わせて合法と言えるでしょうか。

違法なんてありえないんじゃないか、と思ったあなたは待ってください。

例えばこのようなコンサルタントがあります。お客様の支出を抑制するコンサルタントです。お客様の見積書を見て、外部の業者にたいする価格交渉をするのです。つまり、代理交渉コンサルタントです。これは弁護士法に違反しておりブラックな領域です。

 

そのような場合は、順調にコンサルタントとして仕事を受注していたとしても、ある日突然に業務を遂行できなくなる可能性がありえます。

・コンサルタント=キャラ

また、コンサルタントというのはキャラクタービジネスなのです。

キャラクタービジネスとは、あなたにお客さんがつくという意味です。この意味で言うとコンサルタントの会社というのはイグジットができません。

イグジットとはその会社を他社に売却することです。このこと自体は悪い事ではなく、当然のことです。しかしながらキャラクタービジネスである以上、あなたが売却してしまって、あなた自身がいなくなってしまったら、お客さんはいなくなってしまう可能性が高まるわけです。

そのような会社を買収する会社はないでしょう。

・コンサルタントでありつつ事業分散を

ベンチャー企業でいうと、シリコンバレーは一点突破を目指します。しかしコンサルティング会社はイグジットを狙っているわけではないのですから、おのずと失敗の数を減らして、安定経営をするという「守りの経営」をする必要があります。

それに日本というのは失敗したら復活が難しいので、コンサルタントを志す人たちはその点を注意しておく必要があるでしょう。

さらに、コンサルタントというのは赤字を垂れ流すことが難しい仕事です。というのもそこには2つの意味があります。

<一つ目>先行投資をして将来に花開くことがなかなかないのです。その意味では、事業会社での設備投資などとは違います。

<二つ目>そもそも赤字のコンサルタントに頼むのかという大きな問題です。

法人の顧客は、業界によっては景気がすぐに落ち込んでコンサルティングの依頼をしてくれなくなるケースがあります。個人は景気がずれて影響しますが、法人は景気が冷え込んだらすぐさま教育関連の金と宣伝広告費とコンサルティング費用を削減しがちです。

この現実を変えることは容易ではありません。もちろん不景気に強いコンサルティングビジネスというのはあるでしょうが、それよりも守りの経営を目指すコンサルタントとして、まずしなければならないのは事業を多角化することです。

いきなり多角化を狙うというのは、これまでのコンサルタントの事業指南術からすると異端です。コンサルタントの先輩によっては、私に怒りやすい人もいるでしょう。なぜならば、一つの道を究めることがコンサルタントとして重要だと考えられているからです。

しかし、私はその意見に賛成しつつ、違った意味での多角化を勧めます。

例えば私はサプライチェーンのコンサルタントですが、製造業向けのビジネスもやっていますし、あるいはサービス業界や建築建設業界のコンサルティングもやっています。サプライチェーンという軸は同じです。しかし、お客さんの領域を多角化しているのです。

またもう一つは、商品ラインナップの多角化です。これまで個人コンサルタントというのは、顧問コンサルティングをやることが通例でした。しかし私は、事業のやや変則的な多角化という意味から、コンサルティングビジネスだけではなく、セミナー会社からの講師業も引き受けますし、あるいは自ら自主セミナーも開催しますし、また教材のDVDや音声ファイルなども販売しています。そして執筆もやっています。

そして専門的な内容を販売するだけではなく、その専門的な内容から抽出した一般的なコンテンツを雑誌だとか、あるいはWebの媒体に販売しています。

これで完璧とは言いませんが、どこかの事業がダメになっても、死ぬことは無いレベルにはあります。事業をリスク分散しているわけです。

まずは考え方を書きました。

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