「考えろ」発言の際どさ

「5年、10年先のサプライヤ構成とか、まったく考えていないんだよね」ある企業の調達部長との打ち合わせは、こんな言葉ではじまりました。現在の主要製品が新技術の登場によって、2020年代後半から2030年代の中盤まで需要激減を想定した発言です。まだ少なくとも5年先の話。ほんとうに需要減少が顕在化した場合を想定していない課長・バイヤに対し強い危機感を抱いていたのです。

 

こんなとき「将来5年、10年後を見据えた、サプライヤ構成を考えろ」といった指示を出すのはNGです。将来の事業を見据えたサプライヤと取引の持続性は、現場のマネージャーもバイヤも考えています。しかし中間管理職やバイヤが困っているのは、目の前のサプライヤからの供給が滞ったり、値上げ要求されたりです。そんな日々のラインキープ的な仕事に追われている中で、具体的な方法論なしの「考えろ」の指示で、部下対応の優先順位が上がるはずもありません。

 

サプライヤの将来性とか、サプライヤ構成の問題意識は、調達部長の立場ならこうです。サプライヤの将来性を評価する指標の導入といった、具体的なアウトプットを導く仕組みやプロセスの導入を指示してください。そして新たに導入する取り組みに必要なリソースを算出してほしいとつけ加えることを忘れずに。今、マネージャーのもっとも大きな課題はリソース配分、具体的には人手不足です。少ない、もしくはすでに不足している人員=リソースで新たな取り組みをするからには、今まで行っていた仕事を止めるとか簡素化する取り組みとトレードオフまで踏まえた提案を求めてください。

 

もし現場を預かる管理者であれば、業務プロセスになにかムダはないか、削除し簡素化できる作業や工程はないかをみつけだしましょう。そしてなんとかサプライヤの将来性をできるだけ短時間かつ簡単に、今のプロセス上に落とし込むためのプロセスメイクを配下一緒に検討してください。

 

もしあなたがバイヤなら、サプライヤの営業パーソンとの会話や入手した資料から、サプライヤがどんな未来を描いているのか。そして実際に聞いてみてください。日々の業務や確認事項に忙殺されるだけではなく、面談のとき2~3分でも構わないので「5年先、10年先にどうなっているか」を聞いてみてください。

 

社内の異なる階層間で、もっとも注意しなければならないのは「考えろ」だけと指示することです。異なる階層であるからには、同じテーマでも具体的に検討したり討議したりする内容は異なります。指示をする側は、どうやって考えるのかとか、一緒に考えるから、なにかネタを提供してほしいといった姿勢が必要です。そして指示を受けた場合、自分一人で抱え込まずに、上司も部下も同僚も先輩も後輩もサプライヤも関連部門も巻き込んで「どうするか」をテーマにしてネタを集め検討・討議が必要です。とくに「5年、10年先のサプライヤ」といった壮大なテーマは、調達・購買部門だけで検討し、見極められる話ではありません。「どうやって考えるのか」を含めた「考えろ」の指示が必要です。

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