2-(2)-2 調達・購買部の貢献とは「私の経験」
「教えられてないからできません!」
後輩バイヤーがそう言ったのを聞いて愕然としたことがあります。その後輩バイヤーは、私の仕事を引き継いで1ヶ月ほど経っていました。私は次々に仕事を引き受けていましたから、それをそのまま引き継いだ彼は、あまりにも多大な量に驚いていたようです。
次々にかかってくる電話。次々に押し寄せるサプライヤー。日々の業務、問題。そのセクションの業務の何もかもが、自分にふりかかっているように思ってしまったのです。
引継ぎ前は「大変みたいですね」と言っていましたから、自分がやることになる業務への覚悟はしていたようです。しかし、実際それをやってみると、徐々に不平不満が鬱積していったのです。
当初は夜遅くまで残ることで何とか対応していったようですが、じきに仕事の荒さが目立つようになっていました。日々の設計者からの問い合わせには「時間がないからできない」と言い、いつかしら「あの設計者は放っておいてもなんとかしてくれるだろう」と自己の仕事の不完全さを肯定するまでになっていました。
言い訳ばかりが多くなり、自分の窮状を周囲にアピールするようになりました。彼は私の前の机で仕事をしていたのですが、あるとき彼は電話中に私に聞こえるように、こう言っていました。
「それは引き継いでもらっていません。教えられてないからできません!」
こうやって彼は、社内外の人間からの問い合わせを受けないでよいようなポジションを獲得してゆきました。
自分の存在を、自身で否定するということは本当に哀しい話です。