調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(2)-8

(2)各企業が集めた情報、情報収集で気をつけたこと

【解説】

各バイヤーの震災時と平常時の情報収集能力には相関があります。普段から問題を起こさず、残さないバイヤーが、震災時にも良好な結果を残します。平常時と震災時、バイヤーのアウトプットには繋がりがあるのです。事態の掌握が目的の情報収集を行なうことでサプライヤーを混乱させてはなりません。そのためには、情報収集のタイミング、収集方法、そして展開方法をあらかじめ決め効率的に実行しましょう。情報が不足しているのはバイヤー側だけではありません。サプライヤーも混乱し、情報は不足しています。一方的な情報の受け手とのスタンスと取ることなく、情報シェアもあわせておこないましょう。

1)平常時と震災時の繋がり

今回の震災に関してサプライチェーンについても様々な検証が行なわれています。サプライチェーンの現場で働くバイヤーから、震災発生以降の対応に関するヒアリングを行いました。印象的な点は、震災後という非常時、普段以上のパフォーマンスをバイヤーに期待できないということです。震災後対応の初期段階である情報収集にも、バイヤーとしての普段の状態が大きく影響します。バイヤーは、非常時への備えとしても、通常時にサプライヤーとのリレーションを良好に保つことが有効であることを認識すべきです。リスクマネジメントや、クライシスマネジメントは、「平常時と震災発生時は繋がっている」ということを前提にしましょう。震災の被害が大きければ大きいほど、ただでさえ、普段優秀といわれるバイヤーでも本来の力を発揮することは難しくなります。普段抱えていた問題は、震災時にはより大きなボトルネックになります。だからこそ平常時に問題をあらかじめ潰し、整斉としたサプライチェーンを構築することが必要です。日常的にそのように行動してきたバイヤーほど、災害発生時も良好な結果を残すのです。

情報を確認する際にやってはならないこと、それは情報収集で相手を混乱させないことです。複数のバイヤーが同時に、もしくは相前後して同じサプライヤーにコンタクトするような事態は避けなければなりません。震災直後は、被災の度合いが大きいほどに、電話やメールでの対応が困難でしょう。数少ない連絡時に確実に情報を得るために、電話やメールの前に準備をしておきましょう。

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