調達業務のリスクマネジメント~東日本大震災の教訓 1章(1)-4

兵庫県のオフィスにいた渡邊勇人は少しの揺れを感じるにとどまった。オフィスで「地震だ」と叫ぶ声がした。職業柄、すぐに情報収集に努めた。この段階では、また小規模な地震が起きたと認識した程度だった。ただし、東北地方で大型地震が発生したとニュースで確認したあとに、YOUTUBEで津波の被害を見て、今回の大きさに驚愕していた。

16時30分。坂口が乗った電車はまだ再開の見えない停車を継続していた。すると、隣の女子大生が電話で怒りだした。「歩けねえっていってるやろ、迎えに来いや」。誰と話しているのだろう。どうも男友達に霞ヶ関の駅まで車を出せ、と要求していた。それ以外の音のしない車内で、ほとんどの人が彼女の会話と彼女の性質を理解していた。自分の声が車内にどのような影響を与えるのかに、彼女は無頓着すぎた。誰だって苛立ちのなかで、ただただ時間を過ごしているのだ。

16時45分。このころになると、余震が続いているなかで、徐々に人びとは行動を起こし始めた。多くの調達・購買担当者が行なったことは、まず「いま何が起きているのか」の確認だった。社内にあるテレビで報道番組に釘付けになったもの、あるいはラジオで確認したもの。あるいは大手メディアのサイトを1分ごとに更新しながら、いま日本で起きていることを理解しようと努めていた。

地震発生時点から、情報収集とともに多くの人たちが安否確認を行っている。順序は、家族、同僚、サプライヤーであった。携帯電話はほとんどつながらず、携帯メールも送れない、また送れたとしても相手に届くのはそこから数時間たったときだった。公衆電話は災害対応として無料で使えたものの、そこには多くの人びとの列ができていた。

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