5章-39:仕組み・組織体制
調達・購買業務というのは、考えるに面白い仕事です。というのも、単に伝票を右から左に流して、あとは偉そうにして、ただただ加齢することもできます。しかし、真剣にやろうと思ったら、あまりに学習する範囲は広い。なぜならば、企業を相手にし、さらに自社内も相手にするということは、企業の経営からはじまって、製品・役務の内容、取引・契約・法律、交渉・コミュニケーション……など多岐に渡らざるをえないからです。
倫理感が低ければ、そのままやりすごすこともできます。しかし、高い倫理感と使命感をもてば、終わりなき自己学習の機会に恵まれるでしょう。私も最初に、この調達・購買業務の森のなかにはいったときは、その出口の見えなさに、ほとんど卒倒したほどです。
そして、この書籍を手にとっていただけた方は、その終わりなき森のなかで、なんとか調達・購買業務を向上させよう、改善させよう、と強く願うひとばかりのはずです。以前、私が調達・購買領域の講師業をやりはじめたとき、「冷やかしの客がいたらどうしよう」と不安でした。そのとき、講師業の先輩からこういわれました。「コンサルタントが真面目だったら、クライアントも真面目になる。講師業もおなじだ。客は講師に似る。だから、常に鍛錬を忘れず、真摯になっておけ」と。
その意味で、私はつねに真摯に鍛錬を忘れないようにしています。そうすれば、私のまわりには、おなじようなひとが集まってくるだろうと信じるからです。つまり、真剣に調達・購買を変えようとするひとたちです。
そろそろ終わりとなりました。引き続き、さまざまな場面で、まだ道半ばの調達・購買改革について想いを共有できれば、それに代わる喜びはありません。