第七回:自社他部門との連携

1.開発購買での連携の目的

開発購買での連携の直接的な目的は、開発購買活動の付加価値向上です。さらに、最終的に目指すものは、顧客満足を通じて会社事業の売上向上ならびに、利益創出に貢献することです。このためには顧客の視点からの連携活動を推進しなければなりません。顧客志向は連携部門と開発購買との共通のキーワードです。

2.調達・購買部門の開発購買活動にとっての連携の意義

会社経営の主要な目的は売り上げ目標を達成して、適切な利益をあげることです。これを実現するには、顧客志向に基づいた事業活動が不可欠です。しかしながら、調達・購買部門は、開発購買活動においても、その会社の顧客や顧客市場と直接のコンタクトはありません。

一方、営業、開発・設計、生産、品質等の部門は直接顧客とコンタクトがあり、日々の業務の中で、顧客を向いた仕事をするような構造になっています。営業は顧客の要求を満たす見積もりなどの活動をして、新規の受注得るように日々対応しており、顧客とのコミュニケーションは最も重要な活動です。開発・設計部門は、市場や顧客が満足する製品、コスト、仕様を満たす製品の開発、設計をするため、顧客の要求に常に耳を傾けております。

品質部門も、顧客の要求を満たす品質づくりを日々実施しており、品質不良の報告・クレームを受けた際には、顧客への被害を最小限にするよう活動をします。また、生産部門は顧客からの納期要求を満たすように、急な数量の変化にも対応できるような生産システムづくりを続けております。

これらの部門と連携をすることにより、調達・購買部門も開発購買活動で顧客を理解し、顧客に向きあう心がけを持つように努めることが必要となります。これにより、調達・購買部門も開発購買活動で顧客志向の活動をすることが可能となり、調達・購買部門の付加価値や貢献度が高まり、かつ認識されることになるのです。

3.パートナー部門との連携活動のガイドライン

連携を進めるべき他の部門としては、開発・設計、品質、生産、営業、等があります。連携活動は、開発購買のイニシアティブで開始されることの他に経営層からの指示、他部門からの依頼などがきっかけとなります。通常業務の自然な流れで他部門と連携活動を進めることも多いと思います。

連携活動は、改革・改善活動、課題対応、問題解決、通常業務の実施などに分類されます。いずれの場合でも、連携で成果をもたらすためのポイントとしてどのような連携でも共通していることは、開発購買とその部門で連携の目的や成果物を明確にし、それらを達成するために具体的な役割分担を明確にして、何を行うのかに関して合意することです。

さらに、開発購買担当者・責任者は、パートナー部門へメリットをもたらすことを意識して、連携を活性化するために、開発購買の貢献物の明確化、連携パートナーへの共感、自らのスキル発揮などのさまざまな手段を活用しながらイニシアティブをとることが求められます。

4.社内他部門との連携活動例

ここでは、社内他部門との連携の例を個別部門ごとに述べますが、ひとつ目的達成のために複数部門と連携を同時に取る場合も多くあります。例えば、開発購買活動での品質の安定には、品質部門との連携だけでなく、開発・設計部門とも同時に連携することが必要です。

(1) 開発・設計部門

開発・設計部門での連携は、仕様・性能に加えて、コスト、品質そして納期のすべてに影響するもっとも重要なものです。新製品の開発においては材料原価の目標達成ならびにライフサクルの終期までの期間で、調達・購買品のコスト、品質問題発生リスク、納期遅延リスクがもっとも低くなるように部品・材料を選定することがこの連携のポイントです。

すなわち、取引先の技術・ノウハウ等を活用しながら仕様・性能を満たし、継続的に単価が下がり、品質が安定し、納期が守られる部品を連携して選定することです。

(2) 品質部門

調達・購買部品の品質向上・維持のためのパートナーです。規模大きい調達・購買部門では部門内に、取引先の品質改善するグループがありますが、この場合はそのグループとの連携になります。開発購買活動では、調達・購買取引先の品質保証・管理についての体制・仕組み評価や、品質システム監査を一緒に実施して品質面から適切な取引先を選定する連携活動を行います。

また、当社の業界・製品の特性上、厳しい品質水準が求められる場合は、当社の業界の品質要求水準に対応できる体制と仕組み等があるかを、連携して見極めることも重要です。

(3) 生産部門

生産部門との連携の目的の主眼は、量産立上げに向けての調達・購買品の準備活動です。
立上げの生産計画・変更を常に念頭に置き、納期の長いなどの留意が必要な調達・購買品について、準備状況などに関して、生産部門と密な連絡を取り合うことが必要です。

(4) 営業部門

営業部門と連携する目的は、市場や顧客の動向をいち早く知り、それに対応することです。市場や顧客の動向に対応して、開発購買が開発・設計部門と連携して、最適な材料・部品を選定し、顧客市場の要求に沿った新製品開発をすれば、営業部門も対顧客へのアピールができます。これにより、開発購買の付加価値が高まります。

→2018年7月24日(火)に「開発購買セミナー」を実施しますのでご興味があればご覧ください。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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