連載15回目「購買はモノを買ってXXを売る」~学び、飛び立ち、そして独自の世界で永遠の旅を続ける その2

前回のその1では守破離(しゅはり)について、一般的な説明をしました。今回からは、ビジネスでの守破離、特に調達・購買の仕事での守破離をなるべく具体的に考えてみたいと思います。

守(しゅ)について
調達・購買部門をはじめとして会社のある部門に、新卒や異動で配属されたときにOJTで教えを受ける主な師は、その部門の上司や先輩です。このような配属時は、一般的には「守」の時期となります。この「守」の段階では、上司や先輩の教えを原則的には素直に受け入れる時期です。

しかし、その上司・先輩の特性を理解して教えを受け入れることが必要です。例えば、調達・購買部品に品質問題が発生した時に品質問題を自ら体系的に理解し、品質の専門家からできる限りのものを引き出して、問題解決をするタイプの上司・先輩もいます。また、品質問題の詳細には入り込まず専門家にまかせて、取引先と自社の品質の専門家を解決にむけて動機づけるリーダーとして責務を果たすタイプの人もいます。この守の段階では、上司・先輩の特性を批判せず、素直に学ぶようにすべきです。

上司・先輩は神様ではないので長所も持っていれば、そうでない面もあります。その人の強みだけを学ぶべきでしょう。この学びを拒否していては得るものが少なくなります。また、このような調達・購買部品の品質問題対応の場面では、自社ならびに取引先の品質の専門家も師となります。そのような品質の専門家からの素直な学びも必要です。品質問題への対応では、品質の専門家から変化点管理、トレーサビリティなどの普段は聞き慣れない品質関連の専門用語がでてきます。

専門家からでないと学ぶ機会があまりない用語とその意味を、素直に学び習得するのが「守」の段階では必要です。「守」の段階で大切なのは素直さですが、考えることがもう一つの必須事項です。昔の職人(いまでも当てはまるかもしれませんが)は、親方職人の技を盗み一人前になると言われていました。

このような教育法は効率的ではないとして、職人業務のマニュアル化の推進を唱える人もいます。しかし、職人さんたちは技を盗む段階で、自らも考えることを深く実行しているため、その技が光輝くものになるのだと思います。

調達・購買の仕事には、多様な知識・スキルが必要です。そのため、この「守」における師にはさまざまな人たちがいます。すでに述べた、品質の他には、納期に関連する「生産管理」などの製造では、自社の内部顧客である製造部門の人たち、取引先の工場の人たちです。

そして、「コスト」では原価企画や開発・設計の人たちです。また、取引先の優れた営業パーソンからは、相手の立場などを配慮した気配りのある対話法が学べます。そのほか、沢山の師があふれています。そして、この師を見つけるには、学ぶ意欲や探す心構えが必要です。

また、これは調達・購買部門以外にも当てはまるものですが、上司・先輩が部下や後輩に教える方法はいくつかのタイプがあります。例えば、あまり具体的・詳細には言わずに大枠の指示だけをするある意味では「自分で盗め」タイプの人もいます。

また、マニュアルのように基本的な事項も含めて詳細に教示してくれる人もいます。「守」の段階では、そのような師の特性を長所考えて、素直に受け入れてることにより、多様性のある学びを実現できるのです。このような異なるタイプの師から学んだり、考えたりしたことを自らマニュアル化することができれば、「守」の段階を形にして卒業することができます。

次回は、調達・購買などのビジネスでの「破」と「離」について、実例を入れて、具体的に考えてみたいと思います。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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