第五回:開発購買での現行調達・購買取引先との関係改善

現行調達・購買取引先との関係改善ならびに新規調達・購買取引先の開拓は、開発購買にとって、社内他部門の連携と共に、核となる活動です。今回は、現行調達・購買取引先との関係改善について述べ、次回に新規調達・購買取引先の開拓について述べます。

開発購買活動の点から、現行調達・購買取引先との関係で不可欠なのは、戦略取引先からの技術等の取り入れとその実績の評価です。この二つの事項に関して述べます。

1.戦略取引先からの技術・アイディアの採用

ここで述べる戦略取引先とは、自社製品の性能や仕様に大きな影響がある重要部品や材料を開発し製造を行い、自社の今後の製品開発の面で重要とみなされる調達・購買取引先のことです。

優れた人材を保有し、経営資源が豊富な会社でも、万能ではなく、自社で賄えきれない技術やアイディアは外部の会社から補う活動が必要です。この活動を担うことは、開発購買の重要な任務の一つです。これを実現するために、この戦略取引先とは、将来の自社製品開発にむけた日頃からのコミュニケーションに加えて、定例会議を行うようにします。また、担当から上層部まで多層に渡るコンタクトをすることが重要です。この定例会議でも、両社から会社や事業部門の上層部の参加も原則として必須とすべきです。

議事としては、量産調達・購買活動にも関連しているコスト、納期、品質関連の実績に加えて、開発購買としては、次のような情報交換や討議を行います。これには、開発・設計部門など社内関連部門の出席も必要です。この定例会議が取引先にも有益なものであると判断してもらえるように、さまざまな工夫をすることが大切です。

  • 当社製品の市場動向や新製品開発計画に関する説明

会社事業の市場・製品トレンドの内、取引先に説明すべき事項を選択します。取引先から新規技術、新製品、コスト低減などへの協力を引き出すことが目的です。このことを念頭に説明事項を選別して、取引先の関心事を意識した方法で説明します。

  • 取引先の新部材・新加工法の仕様等内容および開発スケジュールに関する説明

取引先に新部材・新加工法の開発内容を説明してもらい、当社の新技術・新製品開発への活用・採用可能性を検討します。部品・材料によっては、当社新製品の仕様に大きな影響を与える可能性もあるので、当社の技術面での検討も必要です。そして、開発スケジュールの説明をしてもらいます。

2.戦略取引先に対する評価

(1)評価項目

品質、コスト、納期の評価は基本ですが、開発購買の面では、技術面と経営面の評価が重要です。年に一度など定期的に行います。また、評価は開発購買が単独で行うのではなく、開発・設計部門や量産購買部門などと協議をして、会社全体としての評価とします。

技術面の評価項目の例としては、技術水準・当社製品の性能目標などへの適合性、当社への技術支援・協力度などがあります。また、経営面で開発購買にとり特に重要な項目は、その調達・購買取引先の当社の事業方向性との整合性ならびにその実績です。

(2)評価の目的と結果の伝え方

当社との取引での実績を評価して、関係改善をするのが目的です。良くない点を並べて責めるのではなく、今後も協力をお願いしたいという意志を背景に結果を淡々と伝えて、当社との取引での成果向上のためにお互いが何をするかを話し合う手段として活用するものです。関係改善の一つの手段であることを、当社の関係者も共通認識を持っておくことが求められます。

ここで、留意すべき点は、誰が、どのように、なにを通知するかを熟慮することです。目的は、取引先との関係を発展させることなので、通知することにより関係が不和になり協力を得にくい関係になってしまっては、元も子もありません。戦略取引先へは、当社の上位職者から、取引先の上位職者(部長クラス)へ良かった事項も含めて文書で通知することです。

良かった点をまず述べて、次に改善必要事項を伝え、最後に別な点からその取引先の強みを述べ、改善に協力をお願いするという伝え方が良いでしょう。原則として、点数で伝えずに、定性的な表現での評価通知が関係の改善という点では好ましいといえます。

→2018年7月24日(火)に「開発購買セミナー」を実施しますのでご興味があればご覧ください。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

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