1章-2:インフラ系調達・購買の基礎知識
きっと現代の調達業務における哀しみの特徴は、効率だけを追い求めて進むことをやめない企業活動のなかで、その存在意義が問われることなくただよっている点にあるように思います。上司は、調達業務がこれからは重要だと説き、しかしながら、現実では現業部門からないがしろにされている部下たちがいる。さらに、誰も、調達部門に心を寄せずに、多忙さゆえに、誰も立ち止まろうとしない。
私はさらに勇気をだして、一人を指して訊いてみました。「この部門の問題点を教えてください」。すると、皮肉っぽい表情を浮かべながら、ヘラヘラと彼は話し出しました。「部門としてのビジョンも、進むべき方向性もわからない。これじゃあ、誰も何もできませんよ」。
完全にそれは、他人に責任を転嫁する態度でした。私は即答しました。「それなら、あなたは、他人に自慢できるビジョンや夢があるんですか」。彼は無言になりました。きっと、通常のコンサルタントならば、その場をやりすごして、適当に仕事を進めて、請求書を発行すれば良いだけでしょう。しかし、私はそれができなかった。属する組織を批判できない弱虫はときに弊害です。しかし、おのれができないことを差し置いて、組織ばかりを批判する無能は、もっと弊害だからです。
すると、彼は続けました。「でも、調達が、うちにどう役立つかもわからない」。そこで、私は話し始めました。調達・購買業務が、どう役に立つか。そして、私たちの業務は高貴な仕事であることを。