5-(2)-2 社内の多様性を束ねる

3章でも取り上げた「サプライヤー集約と部品集約」ですが、むしろ以前の方がサプライヤーと部品は集約されていたのではないでしょうか。そう考えると、集約という問題は、現代的なトピックなのです。分散化・細分化してどんどん横軸で物事を考えることが難しくなっている設計者たち。かつては、全社的な技術戦略を語れる名物設計者もいましたが、いまでは、「隣の席の人が何をやっているのか分からない」という設計者までいます。

むしろ、統一基準を設計者たちが持っている時代は、バイヤーの役割は少なかったとも言えるかもしれません。戦略を持たずとも、機械的に一つの方向に動いてくれるならばこれほど楽なことはありません。しかし、今はそうではないのです。

バイヤーは事務系の仕事でありながら、唯一「モノづくり」に携わる仕事です。技術の話もできる。そういう立場こそが、社内を横軸で見ることができ、縦横無尽に社内を駆け抜け多様性を束ねる役割を持っているのです。様々なプロジェクトに関わり、関係部門と会話を重ね、ともすると分散しかねない調達構造を一つにまとめ、その見返りをフィードバックしてやること。

バイヤーは相手の要求を理解したうえで、「こういうサプライヤーを選定しよう」と投げかけ、ときには違うプロジェクトのコスト低減成功事例などを伝え、違う業界の流行を教えることにより新たな発想が生まれていく――。これによって、企業は多様性を保ったまま、バイヤーという媒介役を梃子にしてより進化を遂げることができるはずです。

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