調達原論3【17回目一法律と契約】

17「法律と契約」

最低おさえておきたい自社契約と下請法 

 

これまで新たな調達・購買の知識を学べ、というとき躊躇してしまうときがあります。

それは、新たなことを喧伝すると、その前に習得しておくべき基本事項を失念してしまうのではないかと懸念してしまうからです。

この世で、過激なことを言っているように見える知識人たちも、その背後に莫大な基礎知識の蓄積があります。そのときの思いつきや、表層的なトッリキーさのみに注目が集まるものの、基礎教養というものの存在なしに、長続きすることはないのです。

では、バイヤーの「基礎教養」と呼べるものは何か。それは、契約知識と法律のことです。前者は、自社がサプライヤーと締結している取引基本契約書をまずは熟読することであり、後者の法律は最低でも下請法(下請代金支払遅延等防止法)を覚えることを指します。

契約書は、どのような条件で自社が取引をしているかを明文化したものです。その内容を知らずして売買業務に携わっているとしたら、それは危ないことです。契約書には、支払い条件や品質問題等トラブルにつながることの取り決めが書かれているのですから。

たとえば、このようなことがありました。

受入部門とサプライヤーがモメていたので、その内容を聞いてみると、工場出荷時には良品だったものが、受領時には寸法精度の甘さからかズレが生じているというのです。両者で、物流のどの時点の揺れ加重によって問題が生じているかの調査を開始することになっていました……。と、それはおかしい。そもそも契約書では、工場出荷時ではなく、こちらの受領先までの引渡し品質を保証しているはずです受領時に不良であることが両社の共通認識なのですから、こちらがこれ以上介入することではありません。淡々と不良品として契約に基づいて返却するだけです。冷たいとか、そのような議論を超え、約束として成立しています。

ところで、同じように、あなたは契約書を熟読し、両社の「約束ごと」を把握しているでしょうか。

下請法は、多くの企業で必ず学習するはずですから、復習です。

親事業者としては、受領日から60日以内の支払いが義務ですから、多くの企業では月末締めの翌月払いを実施しているところが多いでしょう。その場合は、受け入れ部門が数日遅れてしまうと、翌月締めの翌々月払いとなってしまいかねません。全社的に下請法の精神を伝播させることと、当然ながらバイヤーとしては下請け事業者とは相互尊重のなかで取引を進めることを忘れてはいけません。

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