集中購買をあらためて考えてみよう 3

前回の「購入権限の集中」の最後、単に窓口だけを一本化し、一本化を維持するルールが不明確な場合を、安易な集中購買としました。また、購買権限の集中を明確なルールによって実現させたとしても、購買品目や納入場所が引き続き分散していたら、実質的な集中の効果はありません。窓口を集中させた、その事実で、一時的な効果はあるかもしれません。しかし、窓口の集中だけで実質的にサプライヤー側にメリットが生じない場合、集中購買のメリットを継続的な享受は難しくなります。

 

そこで今回は、購入品目あたりの購入量を増大させる取り組みである「購入品の集中」について考えてみます。これは、

 

・標準化

・共通化

 

といった言葉に表され、既に取り組まれておられる企業も多い手法です。同じ商品名の中で、これまで10種類購入していたら、できるだけ種類を減らして、1種類あたりの購入量の増加を目指します。

 

メーカーの場合、ボルトのようなシンプルな購入品も、技術・設計部門がなんらかの根拠を持って形状や材質、サイズを選定しているはずです。例えば、同じ径だったとしても、締結する対象の寸法によって購入品の仕様を決定しています。わずかな長さや径の違いで何種類も購入しているのは、それなりに理由があるはずです。

 

また、こういった取り組みは、既に技術部門の設計者の意識の中にある場合も想定しなければなりません。実質的に種類が増加していない場合、これ以上やって発生する費用に対して明確な効果を生むのかとの抵抗もあるでしょう。この「購入品の集中」に際して問題なのは、調達購買部門では購入品の集中を実現させるための実質的な検討を行って、結論を見いだす事ができない点です。すべて関係部門に依頼しなければなりません。

 

とはいっても、バイヤーとしてある程度購入スペックを理解しているはずです。「購入品の集中」を実現させるために、あらかじめサプライヤーとの間で「購入品目の削減」といったテーマで可能性を検証し、実現した場合のメリットの算定を事前におこないます。事前検討の結果、想定されるメリットと共に、関連部門に実現性の検証を依頼します。メリットの大小によって、優先順位付けも変わってくるでしょうから、調達購買部門でサプライヤーの事前検証は非常に重要な意味を持ちます。

 

またこんなケースもあるかもしれません。実際に検討してみたら、まったく同じ仕様の製品に、異なる購入番号(部品番号)を採番して、何種類にも分割して購入していたのです。このような事態は、購入種類を削減する取り組みで、購入種類を削減の結果、メリットの創出をおこなうと同時に、もう一つ価値ある対応をおこなわなければなりません。それは、なぜ購入種類が増えてしまったのか、その原因の追及と再発防止策を構築です。

 

そもそもなぜ購入種類が増えてしまったのでしょうか。技術部門での検討の際に、購入実績を容易に活用できる仕組みが存在すれば、やみくもに購入品の種類が増えません。また、まったく同じサイズ、形状で材質が異なる場合は、材質による機能の違いを、技術部門で同じ認識が持っており共有されていれば、必要以上に種類が増えるはずもありません。そういった実績の有無や、購入仕様に影響を与える違いを容易に理解できるような仕組みによって、技術部門の業務をサポートできているかどうかが、無駄に購入種類を増やさないための重要なポイントです。調達購買部門主導で後からまとめるといった作業を発生させないために、発注実績のある製品の購入価格や寸法、材質、簡単な機能を検索できるデータベースを整備し、実務に活用しなければなりません。そもそもデータベースがない場合は、まずその構築をおこない、今後二度と同じような無駄な発注をしない仕組みづくりを、技術部門や社内関連部門と共同でおこないます。

 

「購入品の集中化」で大きなメリットが出た場合、実は、集中化をおこなう前の段階に大きな無駄が潜んでいる場合があります。集中化を開始して、調達購買部門の上流工程でこのような事象が確認できた場合は、現状に対する改善活動と同時に、再発防止策が重要です。一時的な集中化(標準化、共通化)を進めるのでなく、将来的に二度と無駄な分散を生まないための仕組み作りが必要です。一度おこなってみると分かりますが、こういった事前に確認できれば分散しなかった状態を集中化するのは、購入要求部門、製造業では技術部門にとって後ろ向きな作業です。調達購買部門は、集中化によるメリットの提示によって、技術部門のモチベーションの源を提供すると同時に、購入品のデータベースの整備を技術部門と共同で進めて集中化に貢献し、二度と同じ分散状態に舞い戻らない確固たる仕組み作りに貢献します。

 

また、このような購入品の集中化の取り組みは、標準的な購入品を対象に取り組むケースが多くなります。集中化の実現によって、在庫スペースの削減や、受領方法・受け入れ検査の簡素化といった形で、メリットの範囲の拡大を調達購買部門主導で進めます。活動は地道で小さな効果の積み重ねが必要です。しかし、こういった活動によって企業の調達体質がより強くなるのです。

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