0章-4 モチベーションゼロの仕事術
まったくモチベーションなるものを仕事に見出すことができない私は、自分のことを病気ではないかと思った。「モチベーションがあなたを変える」「モチベーションが成果をもたらす」と語る書籍を片っ端から読んでみた。有名なモチベーションコンサルタントの講演を収めたCDも聞いてみた。数万円する外国の有名なコーチのものも買った。
- 失敗したら成長のチャンスと思え
- 目標を持て、セルフイメージを高く持て
- 仕事を愉しくしろ
ほぼ、この三つの品を変えたり、組み合わせたりするようなものに感じられた。さまざまな本があり、もちろん、具体的に語っているものもあった。ただ、結局はこの三つの変奏曲に過ぎなかった。
かつ、私も実践してみた。もちろん、失敗を一過性のものにせず、成長の機会と思うことは大切だ。また、目標を確固たるものとし、セルフイメージを高くすることは重要だ。それに、仕事は愉しいにこしたことはないだろう。
しかし、それらを実践したとしても、日々のモチベーションの高さに直接的につながるわけではない。普通に仕事していれば、モチベーションが高くなったり、低くなったりすることがあった。そのモチベーションを、常に高く持て、といわれても、すぐに元のモチベーションレベルに戻ることばかりだった。
考えるにこれはパラフレーズだった。
- 失敗したら成長のチャンスと思え→そう思えないときもあるから苦労しているのだ
- 目標を持て、セルフイメージを高く持て→高い目標を持っても、日々のモチベーションが高くあり続けるわけではないので苦労しているのだ
- 仕事を愉しくしろ→常に仕事が愉しいわけではないので苦労しているのだ
モチベーションと同じく、ポジティブシンキングに関するものも読みあさった。この二者は本によっては、ほとんど差異がないほどに似通っている。「何があっても、それをどう解釈するかは自分しだいだ」と多くは語っていた。他人から何と言われようが、たしかに自分にとっては無関係かもしれないものの、まったく気にしないのは超絶技のように、私には思われた。私が出した結論は、ポジティブシンキングとは鈍感ということだった。
誰しもカンフル剤を打ち続けることはできない。自己啓発書もモチベーションアップ書もポジティブシンキングも、すべて精力剤である以上、その効果には必ず終わりがある。結局、私も多くのやり方を試しては、次の月曜日には出社してパソコンの電源を入れるとき、「仕事はイヤだなあ」といつも思っていた。
何をやったってモチベーションなんてあがらないと、私は知っていた。
もっと正確には、モチベーションなんて維持できないと、私は知ってしまったのだ。