8-2.電子調達 ~そんな電子調達に騙されて! 「新しい購買のIT活用法」~
しかし、である。そのサプライヤから納品が始まると同時に、不具合品が多量に入荷した。私の奔走はそこから始まったのだった。これを聞いてどう思うだろうか?「いや、細かな条件をバイヤー側が提示していなかっただろう」、と指摘する人もいるだろう。
確かにその面は否定できない。だけど、できるだけ細かな条件は盛り込んでいたし、各種認定(ISO など)や品質管理も十分に条件の中に入れてはいた。製品の評価も実施するという内容も含めていた。そして同時にこちら側も十分な評価も実施した。その製品の耐久試験も念入りにチェックしたし、見積りが「名刺コスト」ではないように何度も打ち合わせを実施した。ただ、笑ってしまうが、原因はこういうことだった。
多くの規定に従って、その工場では作業標準書を掲げてはいた。加えて、その企業は多くの監査対応の書類を用意していた。しかし、それを読める人がある時期から工場には少なくなっていた。いや、これは皮肉ではない。文字通り本当に「読めなかった」のだ。リストラクチャリングの煽りを受け、その工場では外国人労働者ばかりが増えてきていた。日本語が読めない作業者ばかりでは、まともな工程など成立するはずがない。作業を確認するための作業標準書を読むことができないのだ。
色々なものを混在して作るようなラインであれば、どうやって対応させることができるというのだろうか。英語だったら読めるだろう、と英語併記にしていた時期もあったが、なんと「R」と「L」が読めずに誤った組み立てを行う作業者までがいた。これは実話である。
このようなリバースオークションの失敗とは違うが、このような例もあった。インターネットが流行の当時、多くの設計者がweb を通じて各メーカーの標準部品の仕様情報をダウンロードしていた。電気特性から、はたまた最小ロットまでをweb からの情報に頼っていたのだ。営業マンに訊くよりも数倍早いので、多くの設計者がインターネットを通じ設計時に使用するための仕様PDF を入手していた。
するとあるとき、自社内の工場で組み立てた完成品を全て回収する騒ぎがあった。それに伴って、私のもとに「超緊急」というお触書とともに代替品の調達依頼がやってきたのだ。なぜこんなことが起こったのか?単純な設計ミスだったのか?
それはこういうことだった。その設計者がダウンロードしたのはどうやらweb ページの更新前の古いスペックシートだったらしいのだ。商品のカタログも新しいスペックをうたっているし、営業マンからの説明も新しいスペックだった。唯一、web に載っている情報を除いては。その後私は、設計者の失敗であるにも関わらずそこから数日間代替候補を作っているサプライヤに電話を掛け続け身体精神ともに疲れてしまった。
「これをいつまでに欲しいのですが・・・」。こういう電話を何回かけて門前払いをくったかわからない。その他には・・・いや、止めておこう。そのような流行のインターネットやリバースオークション、e 調達のトラブルならばいくらでもある。言おうと思えば、おそらく多くのバイヤーから愚痴しか出ないだろう。