6-5.海外調達 ~当て馬見積もりをシュレッダーへ! 「新しい購買の「超」海外調達」~
「重要だろ?」
「重要さは否定しません。だけど、そんなのは実務を積めばどうとでもなります。私はもっと部員の意識を変えるようなことをやりたいんです。今、部員は自分がやっている部品の中で、『これは中国でも作れるかなぁ』というくらいの認識で、その中から適当にピックアップして輸入検討をやっている程度なもんでしょう。そうじゃなくて、もっと大きな絵を描いて欲しいんです。何を誰がどこで、どこから買うのか。そういう戦略構築の上で、骨太の仕事に取り組むっていうことをやりたいんです」
「日本のサプライヤが不要になるとしたら?」
「それも考えた末の結論であれば、問題ありません」
「しかし、海外サプライヤが安い見積りを出していることを知ったら、日本のサプライヤだって必死についてきてくれる」
「そりゃ、見せているからですよ。海外サプライヤだって、日本のサプライヤのコストを最初から見せれば、それ以下で持ってきてくれます。そんなのは当然ですよ。まずは私たちの意志や戦略があるべきところなんです」
「そんな単純じゃないだろ?これまで付き合い長いサプライヤもいるし、系列の企業だってある」
「別にそういうサプライヤを否定するわけじゃありません。だけど、そういうサプライヤのコストが全世界の市場を見て高かったら意味がないし、自社の戦略に合っていなければもっと意味がない。そうでしょう?やるべきことは、トータルで見たときのコストであって、局地的に見たときのコストじゃない」
「ただ、人員的に見ても、グローバル調達にそんなに対応できることのできる人数はいないぞ」
「逆ですよ。もし、そういう結論になるのだとしたら、これは購買の方が姿を変えないといけないでしょう」
「そうだが・・・」
「私はもっと先のことを考えているのですが・・・」
「先って?」
「もし、結論として日本のサプライヤの3 割が不要だということになったら、もしかして日本にいる我々購買部員も3割が不要になるかもしれません」
「人員の海外への移転か」
「そうです。ただ、そうじゃないかもしれません。単純に中国ならば、中国の現地人に任せればいいのかもしれない。日本企業だから日本人が全世界にいる必要はないですから。もちろん、ウチの会社が突然人員をカットすることはないと思いますが」
「そうとは思うが・・・」
まずは基本的な考えを理解してもらうことができた、と感じた私はまずは部長室を後にした。社内プロセスを確立することが大事だと感じていた私は世界最適調達を実現する戦略構築の大切さを説く文章から書き始めた。
「これまで、どれだけの無駄な見積りが海外サプライヤに意味もなく依頼されてきたことでしょう・・・」購買部員を狭い日本の枠に留めておいてなるものか。