6-4.海外調達 ~当て馬見積もりをシュレッダーへ! 「新しい購買の「超」海外調達」~
そう思った私は、今回もまた部長の元へ訪ねていった。グローバル調達は単なる短期的なコストダウンを目指すものではなく、購買部をサプライチェーンのプロフェッショナル集団へと生まれ変わらせる施策でもあるのだ――。
「部長、グローバル調達をより深化させたいと思いまして、是非グローバル調達を購買改革プロジェクトの一項目に入れたいんです」
「ああ、グローバル調達か。それは今まで坂口が出してきた提案で最も理解できるな。特に全社的に、グローバル調達を推進してコストダウンをやれという命令がおりてきているからな」
「いや、そんなんじゃないんです」
「そんなんじゃない?何だ?コストダウンにつながらないグローバル調達をやるっていうのか?」
「もちろん、コストダウンにつながることが多いと思います。でも、私がやりたいのは、今会社で求められているような短期的なコストダウンを目指すものではないんですよ」
「やりたいこととどう違うんだ?」
「単純なことなんですよ。グローバル調達をすべきところと、すべきでないところを明確にする。そして、当て馬の見積りを取るのを止める。長期的にどういうサプライヤと付き合うかを決める。これだけのことです」
「それは、今ウチでやっていることとの違いが分からないな」
「違いますよ。今やっていることは全然私が言ったようなことを理解していないでしょう。そうじゃなかったら『グローバル調達を10%増やす』なんて意味のない目標が出てくるはずがないじゃないですか?」
「いや、あれは指標で・・・」
「指標だけが一人歩きしているんですよ。あれに乗っかるのは、海外サプライヤとのやり取りを英語の勉強と思っているバイヤーか英語を自慢したいバイヤーです。あるいは中国に出張しに行きたいだけのバイヤー。どっちも、目的を履き違えているのは明らかですよ」
「まだ、始まった段階だから・・・」
「いや、始まりだからこそ重要なんですよ。始まりのときに間違った方向を向いていたら後で修正することなんてできないでしょう?今皆がやっているのは、中国に出張しに行って、見積りは取る。だけど、その結果は曖昧なまま、現行のサプライヤのコストを下げるネタにしか使っていない。これって、本当にバカげていますよ」
「分かった。じゃぁ、購買三課にいる津田を呼んで、講習会を開こうじゃないか。あいつは海外での経験もあるし、輸入業務にも携わっている」
「いや、部長。私が言っているのは、単なる輸入業務のノウハウじゃないんですよ」