5-11サプライヤーマネジメントの基礎 ~どのように関係を終わらせるか

新しく開拓するサプライヤーがあれば、取引関係を終えるサプライヤーの想定も必要です。突然の取引停止は避け、円満な取引関係の解消を目指します。

☆なぜサプライヤーとの関係を終わらせるのか

サプライヤーマネジメントは、さまざまな要因によって起こる「変化」に対して、バイヤー企業の要求事項をサプライヤーが納入し続けるために行います。しかし、事業内容は変化します。バイヤー企業が顧客に提供する製品やサービスの変化は、サプライヤーへの発注にも影響を及ぼします。

バイヤー企業の変化に、サプライヤーも対応し続ければ取引関係は継続します。しかしバイヤー企業のニーズとサプライヤーのもつリソースがミスマッチとなる事態も想定が必要です。過去に重要だったサプライヤーが現在から将来まで重要であり続ける保証はありません。双方の進む方向性が明らかに異なる場合、サプライヤーと取引関係の解消を検討します。

☆避けるべき事態

グローバル化や急激な為替変動、国内産業の空洞化に対応するため、海外サプライヤーとの取引が活発です。海外サプライヤーとの取引を開始する際、国内サプライヤーの取り扱いには注意が必要です。

下請中小企業振興法は、取引停止の際相当な猶予期間をもった予告を親事業者(発注側)に求めています。この「相当な猶予期間」は明確に規定されていません。しかしバイヤー企業の依存度が高いサプライヤーにとって、突然の発注停止は死活問題です。実際に相当の猶予期間を欠いて、サプライヤーが損害賠償を請求し認められた判例もあります。突然の取引停止はトラブルの原因となる可能性が高く、バイヤー企業としては避けるべき事態と認識しましょう。

☆取引終了を準備する

継続的に購入してきたにも関わらず購入減少するアイテムや、海外サプライヤーからの購入を行う場合、その原因と購入計画をサプライヤーへ提示します。伝えるべきポイントは「原因/理由」です。あらかじめ取引を続けられない根拠を伝え、まずは改善を申し入れましょう。その上で改善の意志がない、あるいは結果が得られなかった場合、はじめて取引停止をサプライヤーへ伝えます。

過去に大量の発注を行っていても、時代の変遷とともにニーズが減少し発注量が減っている購入品の取り扱いは、厳しい対応を迫られます。購入数量が少なくなった過去の大口購入先との関係など、バイヤーは触れたくないテーマです。しかし調達購買部門の発注権は、大きな権限であり「力」です。調達購買部門としての責任を果たすにはむだにせず、効果的な活用を目指します。新規発注がなく将来的に発注量が増えないサプライヤーは、サプライヤー変更で生じるコストを見極め、発注を継続するのかそれとも取引関係を終わらせるのかを決定します。突然の取引停止を避けるためには、事前告知を行いバイヤー企業とサプライヤー双方が合意の下、あらかじめ準備するしかないのです。(牧野直哉)

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