捨てられる調達部門について

先日、関東の企業から、面白い話を聞きました。それまで、その企業は客先の調達部門から「当て馬」(発注する気がないのに、見積書だけ依頼されること)として扱われることに困っていたそうです。そこで、その企業が選択したのは、なんと「当て馬の見積依頼には対応しない」「片道の移動に1時間以上かかる取引先はすべてお断りする」。

なかなか衝撃的ですよね。結果、3年たった今では、以前よりも業績がよくなったそうです。移動時間が削減したぶん、あらたな製品の開発だったり、マーケティングを考慮したりと時間配分を変えたからだそうです。もう、取引先が調達部門を選ぶ時代なんですよね。

昨今では、全国的な人手不足によって、納品してもらえない、外注を引き受けてもらえない、といった状況が多発しています。電子部品が納期1年後といった状況は日常茶飯事になっています。そこで、多くの調達部門は態度をあらためて「納品していただく」といった姿勢になっています。良い傾向です。

現在、米国で進んでいる仕組みで、相互評価制があります。これは、サプライヤも調達部門を匿名で評価し、それが公開される仕組みです。飲食店の「食べログ」ではお客が店を評価します。その逆バージョンですね。店側がお客を評価し、お客の評価が公開されるようなものです。

タクシー配車サービスのウーバーもそうで、あれは運転手さんがお客を点数つけているんですよね。他にも類似のサービスがあります。点数が悪いお客には、そもそもタクシーがやってきてくれません。

サプライヤとしてみると、限られた経営資源を、どのお客に振り向けるかを考えます。そのとき、不道徳で、非礼な調達部門と、公平で礼儀正しい調達部門のどちらに売るかという問題です。つまり、これまでCSRとか倫理観は、どちらかといえば企業姿勢として語られてきました。しかし、これからは、納入してもらえる、さらに適正な価格で提供してもらえる、まことに実利的な側面をもちだしたというわけです。

それにしても「あの調達部門の注文だけは、絶対に頑張って納品しよう」と思ってもらえる組織を目指したいものですね。

(今回の文章は坂口孝則が担当しました)

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