調達部員との恋愛について
ある大学生は、メーカーに就職しました。地方都市の工場に配属されました。問題になったのは、学生時代の彼女です。彼女は大学のある地元で就職することになりました。
「どうすればいいか」。悩んだ男性は、就職してから毎日、速達で彼女にハガキを送り続けました。ピンポン、「速達です」。ピンポン、「速達です」。彼女は郵便局員から速達を受け取り続けました。その一年後に、どうなったか。
彼女は郵便局員と結婚しました。
これは笑い話ではないように感じます。私は、対面の重要性を考える際、このエピソードを思いだします。現在では、テレビ会議、メールなど、直に会わずに仕事を済ます機会が増えています。現在では、LINEもあります。私などは、一度も会ったことがない編集者から原稿の依頼が届いて、そのまま原稿を送って、一度も会わないまま仕事が完結する場合すらあります。
たしかに一度お会いするには、前後含めて3時間くらい必要です。ただでさえ、労働時間を短くしなければならない昨今の風潮にあって、できるだけ効率的に行うのは当然です。しかし、面談すると、意外な情報を入手できる場合もあります。あるいは、人間の機微を感じることができます。これをどう考える必要があるでしょうか。
現在のところ、まだ仮説ではありますが、打ち合わせや面談について、こう考えています。目的が文字通り「顔合わせ」なのか「情報交換」なのか、「意思決定」、さまざまなものがあると思います。冒頭のエピソードではありませんが、感情を揺さぶる場合には、対面が必要だろうと私は考えています。
たとえば、私はセミナーで講師として語ります。そのとき、情報を伝えているように見えるかもしれませんが、伝えているのはこちらの熱意です。情熱というと大げさです。しかし、熱量は伝わるようにしたいと考えています。仕事でも、「困っている、助けてほしい」とか「どうしてもあなたに伝えたいことがある」とか、「この真剣度を理解してほしい」といった、相手の感情に振れる必要がある場合は、対面のほうがいいでしょう。
そしてテレビ会議よりも、なぜだか、その熱は、直に会ったほうが伝わるのはいうまでもありません。
(今回の文章は坂口孝則が担当しました)