購買部門の社内的地位を憂うバイヤー
「購買って、サプライヤーへの注文書を発行するだけでしょ?」
「購買って何してくれるの?」
容赦の無いコメントが寄せられる。これって、日本のメーカーの99%以上がこんな状態じゃないかと思っている。それほど、資材調達部門、バイヤーへの評価は痛烈だ。メーカーであれば、製造コストの過半数以上を決定し、損益にも重大な影響を及ぼす、購入品への価格決定という重要な責任を持ちながら、このありさまなのは、どうして?と思う。
これは、私がバイヤーで、自らの責任を軽減しようとおもっての発言ではない。が、もし資材調達、購買部門が、それ以外の所属部門の人から見て「どうしようもない」と写るのであれば、それは厳しく自戒を求められる事態なのだ。資材調達部門に所属するバイヤーは、社内的に与えられた役割として「買う」事を行っているが、すべての決定を自ら行っているわけではない。企業が行っている「買う」事は、個人が日々行っている「買う」と比較しても、「買う」事のある一部分を行っているにすぎないからだ。
最近では一般的になったJ-SOXにしても、購入品について、発注者と受領者の明確な区分が必ず言われている。個人の「買う」ではありえない。自分が欲しいと思ったものを、自分の財布と相談して、納得して購入し、大抵の場合、購入を決定した人が、モノを受け取る。資材調達/購買の場合、こういった一連のプロセスは、分業化されている。私が買っているものだって、自分で欲しいか?と言われれば、まったく欲しくはない。欲しいものは、エンジニアがスペックを決定し、生産計画からの数量提示によって、サプライヤーと価格を決定している。
資材調達/購買部門に対して不満を持つ方は「自分でも買える」と思っている。私も買うは誰にでもできると思う。しかし、少しでも自社に有利な条件を引き出すのはバイヤーがたけていると思うし、バイヤーはそういった他の部門には無いスキルを持ち、そのスキルを周囲に知らしめなければならない。でなければ、いつまでたってもバイヤーの社内的な地位は低いままである。
問題は「有利な条件で買えない時」である。例えば、世界一の生産数量を誇る自動車メーカーと比較して自社はダメだ、と嘆く場合、これは、そもそもその自動車メーカーと同じ条件で買えるのがおかしい。だって比較対象は、どう考えてもそのセグメントにおいては世界一の購買力を持つメーカーだからだ。取引条件をひもといてゆけば、あのメーカーよりどうしても見劣りがしてしまう。バイヤーはそんな状況でもなんとかして、有利な条件を得ようとする。そんな姿勢は尊いし、バイヤーには必要だが、すべてにおいて同等もしくはそれ以上の条件提示を引き出すのは不可能だと思う。不可能を可能にするバイヤー姿勢は必要だけど。
だから、である。バイヤーだけでなく、社内の関連部門の総力を挙げて、どう買うか?に相対する必要があるのである。その先導役は、資材調達・購買部門がやるべきだ。それをトップが理解する必要もある。最初は誰も理解者を得られないかもしれない。が、日々一歩一歩、少しでも積み重ねを繰り返してやっていくしかない。関連部門から突き放されたら、自分から近づいて、である。