バイヤーのセオリー

「年間数量は、約10000です。あっ、最終的にはわからないですけどね」

「型費ですか?大丈夫だと思いますよ、ちょっとわからないですけど」

「納期は12週ですか?わからないですけど、大丈夫だと思いますよ。」

これは、私が出席したサプライヤーとの打ち合わせで、エンジニアが放ったサプライヤーへの言葉の抜粋である。次に一緒になる機会があれば、分あたり何回「わからない」と言ったか?をカウントしようかと思うくらいに「わからない」を、センテンスの前後に連発していた。

最近の景気後退局面、何かここ数週間で一気に景況感が悪化している気がするが、こんな状況ではきっとわからないって言う回数も増えるんだろうな。そして、わからないといえば言うほどそれは「リスク」に姿を変え、その後に提示される見積金額へどんどんリスク分が上積みされていくんだろうと思うと、担当バイヤーの苦労もわかるようなものである。

一生懸命にわかろう、理解しようと思って、なるべく自分の中で「わからない」ハードルを高くして、その上でやむを得ず「わからない」発言と、最初から理解しようとしないで、ハードルなんて無いかの如く「わからない」と言うのでは、言葉に伴う迫力が違う。例えば、上記の場合だとすべて取引に関する重要な確認事項となる。「わからない」って、そのリスクを発注側から受注側へ押し付けとなる。それって受注側はどう回収するか?見積金額へのリスクを積む以外に明確な解決策はないと思うのだが。

継続的に何度も取引を行っているようなケースでは、まぁこういったやり取りも「あ、うん」の呼吸でお互いが理解をして、リスクも最小化されるのかな?いや「あの人の発言はあてにならない」と、常に高い見積金額で買わされているのだろう。それで会社が継続していけば問題ないかもしれない。そうやって持ちつ持たれつの相互依存が保たれれば良い。でも、この厳しいご時勢、そんなんで良いのか?って思う。

サプライヤーによって、リスクを数値へどう反映するか?は違うだろう。その会社の文化、考え方が大きく影響する。そして標準的な考え方もあるようでない。そんな抽象的な、数値化しにくい内容を、日々の取引に織り込むのであれば、リスクを排して、確定的な物言いを行い、自社でリスクを図る方が、よっぽどリスクの管理になると思う。リスクはごまかそうと思っても、結局どこかで負担するものである。だったら、なんだかわからないけど気がつかない中で負担していたよりも、自分でわかって、管理して負担が良くないかな?なんて思う。

まぁ理想論ですけど、私は理想を目指していますから。

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