日本の調達が納期に追われ、外資系が追われない理由
納期調整、納期フォローといった業務は、これだけシステム化が進んだいまでも調達・購買業務の大半を占めます。多くの調達・購買担当者は、納期調整がイヤで心を病み、そして不毛だと考えています。でもやらねばならない。なぜ納期遅延がなくならないのでしょうか。
理由は二つしかありません。「サプライヤが工期を長くしがち」か「短納期で発注しすぎ」です。
そして多くの場合は、後者の理由が大半です。ではどうすればいいのでしょうか。もちろん答えは単純です。「早めに発注しろ」。しかし、コトはそう簡単ではありません。ではどうやって早めに注文すべきかわからないからです。
生産管理の担当者に申し入れても、「こっちだって頑張っている」としかいいません。システム屋に聞いても「標準リードタイム以下で注文設定すること自体がおかしい」といわれるだけです。営業に苦情をいっても「私たちは顧客のために必死でやっている」と逆に言い返されるだけです。
調達関連のセミナーで講師に質問しても無意味です。なぜなら、事情は各社それぞれなのですから、回答しようがないのです。受講生としては「社内調整をしっかりする」とか「余裕のあるリードタイムで発注する」といわれても、そうできないから困っています。しかし講師も一般論しか答えようがありません。
あるベテランはこういいます。「たとえば短納期の場合は、対応費としてサプライヤの価格をあげたらどうか」。なるほど、ただし予算化できるでしょうか。またアップ額はいくらが妥当でしょうか。ベテランはこうもいいます。「外資系のように、事前に合意したリードタイムにしたがった注文をする。無理強いはしない。それだけだ」と。
しかし、不思議なのです。「外資系は納期を無理強いしない?」。そんなはずはありません。なぜなら、いつもノンビリしていると、スピードで他社に負けてしまうではないですか。何人かの外資系調達担当者に訊いてみました。平均的な答えは、「納期フォローはする。しかし、日本企業のように、自分たちの発注タイミングの遅さを棚に上げて、サプライヤを急かすようなことはしない」というものでした。
ただ、私が不思議に思うのは、外資系企業の最終製品の納期遅れが頻発しているかというと、そんなことないのです。結局は、サプライヤの製品を組み込んだ最終製品は、外資・日系企業にかかわらず、同じようなタイミングで出荷されているのです。
なぜでしょうか。これを調べているひとがいました。ご興味があれば、ネットで調べてみてください。ここでは、結論を書きます。日系企業は発注までの決定タイミングが長く、結果として、サプライヤに短納期を要求しがちというのです。外資は平均的に、営業して生産計画を立てて、調達が発注するまでのスパンが短く、そのぶん調達期間に余裕があるというのです。
日系企業の決定までの遅さは、なんとなく身に覚えがありませんか。このシステムの時代にですよ。
しかしえらく私はこの結論に感心したのでした。「そうだよなあ」と。スピードは武器です。外資系は、サプライヤにのみスピードを要求するのではなく、すでに決定プロセスを速くしているので、日系と違って調達で帳尻を合わせる必要がない、と。繰り返し、これはすべての会社がそうだというわけではありません。
ところで、設備調達で、日本が弱いのは同じく、発注までのプロセスが長いからだといわれます。即決できれば3割くらい安価になるのに、ダラダラして、購入決定しないから価格まで高くなってしまう、というわけです。スピードの速さは、コストにまで影響があるというわけです。
話が変わるようですが、アマゾンはもっとも回転の速い品目しか自社在庫を有していません。お客からは注文と同時にお金をもらい、いっぽうでサプライヤには一ヶ月遅れで支払いをしています。なんと運転資本回転が速すぎるどころか、逆転しているのです。仕入よりも、販売のほうが先にお金をもらうわけですからね。このお金の出入りの差で金利も稼ぐというモデルです。スピードは他社優位性すらもたらすのです。
スピードという点、私は「働き方改革」にもつながる気がします。無限に資料を作り、上司への説得に異常な時間がかかる企業に、働き方の「改革」などできるはずがないからです。