怒らない技術

ビジネスマンにとって、かつてから「怒らない」ことが重要視されてきました。ベストセラーになったものにも「怒らない技術」というものがありますし、類書もたくさん出ました。私は絶対に怒らないほうが良いとは思いません。キレたほうが目の前の問題を解決できるケースだってあります。

でも、怒りすぎは問題ですよね。それに、怒ったあとに、自己嫌悪に陥る場合もあります。普通の勤めびとにとって、怒ることのメリットとデメリットは1:9くらいではないでしょうか。少なくとも、怒ることで人間関係が友好になることは考えにくい。どうすれば怒らずにすむのでしょうか。

最近、簡単な解決方法を見つけました。これは、見つけた、というより、教えてもらって実践したら、かなりの怒りが消えた方法です。これには、ウパニシャッド哲学からはじまる禅を使います。日本では座禅という形で輸入されています。いや、これは難しいことではないのですよ。だから、少しだけ聞いてください。

この座禅の本質は、すべてを無と捉えることで、無私などとも解説されますが……。私たちはビジネスマンですから、難解な解説は不要です。使える技術だけ取り入れましょう。そこで、怒らないための方法ですが、すべてを「第三者的に解釈しなおす訓練」をすることです。どういうことでしょうか。

一日、気づいたときでけっこうですから、こう考えてください。あなたがどこかが痛いとします。すると、頭のなかで「そこに痛みがある」と、小説を書くように記述するのです(繰り返し、頭のなかで)。たとえば、部下がヘマをして、ムカっとしたとしますよね。そうすると、あなたは、すぐさま「部下のミスにより、○○は怒りを覚えた」と頭のなかでいってみるのです(○○には、あなたの名前が入ります)。

そうすると、なぜだか怒りたい気持ちが薄れます。

この客観視ですが、あなたの怒り(のようなもの)を、まず他人のように描いてみることこそが重要です。怒りとは、どこまでも私的なものです。その私的さを、客観に持ちこめば、怒りの大半は消えてしまいます。

ウソでしょうって? ためしに、何回かやってみてください。

私は、歩くのが遅いひとたちが嫌いです。狭い道で二列になってノロノロと歩くカップルなど見ると、その二人を……(自主規制)したくなります。しかし、そんなときにも、「歩くのが遅い二人がいる。坂口は怒りを感じた」と頭で記述するだけで、なんだか怒るのがバカらしくなるというか、その二人ていどが私の感情をコントロールすること自体がありえないと思ってしまいます。

たいてい、怒りたいことも、数日、あるいは数年たってしまえば、どうでもいいことです。出来事は一つ、でも、解釈は何通りにもなります。だったら、解釈しだいで、あなたは他者に左右されない人生を歩めます。

調達・購買担当者をやっているときに、社内関係者のデタラメや、サプライヤのデタラメに、常に心穏やかではありませんでした。いまの仕事をはじめてからも、そうです。しかし、私は私であり、他者が私の気持ちを左右するなんて許せない。そこにこそ、「怒らない技術」が必要なのでしょう。とくに、怒り心頭に発することで、仕事が手に付かない場合ありますよね。そんなときに客観記述はオススメしたい技術です。

それにしても、「怒らない技術」を書いた著者が、「こんなつまらない本、よく売れたね」と言われても怒らなかったというのは(笑)、すごいなあ、と思うわけですが。みなさんも、不用意に怒らない技術を会得することで、感情を自分に取り戻しましょう。

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