調達担当者が名刺交換したひとの名前を覚える方法
自慢になりませんけれど、私がひとの名前を覚えるのが苦手です。異常なほど覚えられません。たとえば、書籍であれば「何々という本の、どこに、こういうことが書かれていると」即座に答えられるくせに、ひとの名前はまったく記憶にできません。これは、調達・購買担当者だったころからの悩みでもありました。いまでは、営業(のようなこと)もしますので、問題はより深刻化します。
調達・購買担当者であっても、名刺をもらった瞬間であれば大丈夫ですよね。名刺を机上に置くわけですから。しかし、問題なのは2回目に会ったときです。「あの方、どなただっけ?」と同僚に訊いてもわからない、または一人でお会いするときには名前を語らずに会話を進めるしかありませんでした。
私がいつも心している言葉に「あなたの悩みは、すでに誰かが解決してくれている」があります。世の中は新たな問題が次々に出てくるようだけれど、実際は過去からほとんど変わらない問題が繰り返し出てきているだけだ、と。「不易」とは、何もかわらないさまを指します。とすれば、私と同じ悩みを抱えているひとはきっとたくさんいて、誰かが解決手段を考えてくれているはずだ。そう思った私は、だいぶ前に、方法を探しました。
そこで、役立つ(と私が思った方法)を三つご紹介します。これでも私はまだ酷いままではありますけれど、前よりはマシになりました。
一つ目は、名刺をもらった瞬間に、「苗字が同じ有名人」を思い浮かべる、という方法です。たとえば「木村」さんだったら、「ああ、木村拓哉さんが10歳ほど加齢して、20キロくらい太ったら、こうなるかもなあ」とか(失礼!)強引にでもくっつける。これが意外に有効です。同じ人間なのですから、その「木村さん」と「木村拓哉」さんは、まあなんとか共通点が見つかります。あるいは「この有名人を30回くらい殴ったら、こんな顔になるよなあ」とか、いやこれは冗談ですけれども、なんとか結びつけることで脳に刺激を与えます。
それでもなお、有名人を思いつかない特別な苗字はたしかに存在します。そんなときは、すぐさま「苗字」のものの、を話題にしてしまう。そうすれば名刺を眺める理由にもなりますし、その苗字について数分話せば、覚える可能性が高くなります。
二つ目です。それは、手帳やスケジュール帳に、相手の会社名だけではなく、お名前もあわせて書いておくことです。それで「前回はいつお会いしましたっけ?」と手帳をめくれば、自然にお名前を確認できます。(この意味では、手描きの手帳のほうが、スマホよりも有効でしょう)。
そして三つ目。これがおそらく一番だと思います。それはお名前を失念するくらいのひとですから、きっと会うのが久々のはずです。そこで「以前にお渡しした名刺が古くなっているはずなので、もう一度、お名刺交換いたしましょう」と名刺を差し出してしまう。これでなんの問題もなくお名前を再確認できます。一流の営業マンは、なんだかんだいって、名刺を置いてくる、あるいは名刺を交換してくることだといいます。
まあ、もちろん「そんな手段なんて使わずに、ちゃんと相手のお名前を覚えろ」というまっとうなツッコミは承知しております。とはいえ、同じ悩みを持つひとたちに少しでも役立てばと思いました。調達・購買とか営業は、人的ネットワークが重要であるとすれば、まずは相手のお名前を覚えることからはじまるでしょうから。(坂口孝則)