コストを気にする調達担当者は、なぜ○○を気にしないのか

このところ、消費の三段階仮説なるものを考えています。消費とは、もちろん、お客様のことです。消費が第一段階から第三段階になるにしたがって、調達・購買部門に求められる役割が異なる、というものです。

第一段階、大量生産物の消費
第二段階、自己満足の消費
第三段階、社会参加の消費

第一段階においては、消費者は家電や自動車などを購入します。理由は、生活の利便性を向上させることです。白物家電はかつて家庭を便利にしました。この段階で求められるのは、大量生産の実現と、それに伴うコスト削減スキルです。調達・購買においても、サプライヤの生産量確保と、サプライヤ原価の査定と、コスト削減が求められます。

そして、第二段階においては、ブランドバッグやデザイン性にすぐれた商品を消費します。これは生活レベルがあがったので、次に自己を引きあげるような消費が可能となったからです。ここでは、消費者の潜在ニーズをつかんだり、デザイン力が求められます。調達・購買においては、開発購買的な能力が求められます。そして、お客様にとって、それぞれの仕様に価値が有るか無いかを見極める必要が出てきます。

こう考えると、調達・購買の仕事も、このように進化してきました。

第三段階になると、消費者は、社会全体のことを考えはじめます。フェアトレードだとか、オーガニックだとか、あるいはその企業が社会的に意義のある活動をしているか、といったものです。それは商品に関係しているかというと、企業「姿勢」に近いものです。

第三段階では、企業の調達・購買に求められるのは、やや超越的なことです。自らを律し、サプライヤを指導することです。CSRの観点からは、サプライヤの反社会的活動を監視せねばなりません。また、サプライヤの労働環境整備にも突っ込む必要があります。雇用条件等の確認もかかせません。

この第三段階では、コスト削減うんぬんよりも、清廉潔白さが求められます。さらに、サプライチェーンをクリーンにすることで、市場からの認知度をあげ、評判を獲得する、積極的な役割を負います。コスト削減は「減らす」仕事ですが、評判を「増す」仕事が注目されるとは、きわめて面白いことです。このところ、エシカル調達(倫理的にすぐれた調達活動)なる単語が登場しています。まらに、これは第三段階で必要となるでしょう。これを下にまとめます。

第一段階、大量生産物の消費==>コスト削減スキルが必要
第二段階、自己満足の消費==>開発購買的スキルが必要
第三段階、社会参加の消費==>エシカル調達スキルが必要

そして、「社会満足の消費」の次には何がやってくるでしょうか。これは、まだ私のなかで固まっていないのですが、宗教消費の時代だ、と思います。これまで心の安定を担ってきた宗教的な側面が、SNSや「つながり」「絆」といったものに代替されていきます。そして、人間は宗教を介さずに、社会とつながるようになっていきます。実際に、全国で宗教法人の数は減少し続けています。

さて、そのときの調達・購買に求められるスキルとは……。これは、仮説はありますが、固まってきてからお伝えします。みなさんはなんだと思いますか。

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