なぜ調達担当者が「水」に注目するのか
サプライチェーンにおける水に注目が集まっています。文字通り、水です。世界の人口は増えるのに、水は不足していきます。現在、世界で5兆2350億立方メートルの水が使われており、それが2040年までには3割も増えます。
私は専門家ではないので、二酸化炭素排出と温暖化の因果関係は完全に肯定はしません。ただ、二酸化炭素と温暖化の関係がどうであれ、平均気温上昇はたしかです。水温上昇が引き起こされ、水不足が起きているのもたしかです。そうなると、企業活動を行う過程で、いかに水の使用量を抑えるかは問題となさざるをえません。
しかし、なぜ調達・購買が関係あるのでしょうか。KPMGあずさサスティナビリティの調査によると、企業のうち、水の自社使用は24%にすぎません。実に76%はサプライヤが使用しているのです。ここに調達・購買が関わる必然性が生じます。将来、きっとCSRの観点からも「サプライヤ水管理」を考慮すべき時代がやってきます。
2008年には007が映画のなかで、犯罪組織と戦うのですが、彼らが手を染めているのは水資源ビジネスだったことに嚆矢を感じます。また、最近では『地球を「売り物」にする人たち」なる本が売れています。これは地球温暖化を契機にビジネスを拡大しようとする「悪い奴ら」を丁寧に取材したものです。なかなか面白かった、と思いました。
製造業に属するひとは、より水使用量に注目したほうが良いのです。なぜなら、工業製品のケースでは、サプライチェーン上の水使用量の9割は、サプライヤによるものです。とすれば、近い将来に、水使用管理が調達・購買担当者の新たな仕事になるのです。それを察したのか、ソニー、キリン、横浜タイヤ、といった先進的な企業は、サプライヤの水使用量調査に乗り出しました。
水使用量がサプライヤ選定基準になる、とまでは思いません。ただし、一つの目安にはなる時代なのでしょう。
また、まったく同じ水使用量のサプライヤAとサプライヤBがあったとします。使用量が同じであれば、どっちから調達してもかまわない、と思いがちです。しかし、その工場がどこにあるかで意味が異なります。水資源の乏しい国で生産する場合は、周囲への影響があるでしょう。逆に、水資源の豊富な国であれば、周囲への環境影響は限定的といえるでしょう。
繰り返し、まだ水使用量がサプライヤ選定基準になるとまでは思いません。しかし、水資源が枯渇するかもしれないといわれているなか、いまのうちから各企業の水戦略に注目するのは価値があることでしょう。英語の資料だけとなりますが、コカ・コーラ、ペプシコ、ネスレ、といった企業は環境会議などで、頻繁にサプライチェーンの水使用管理について言及しています。気になったら探してみてください。
水はビジネスになり、そして水使用管理を実践する時代になっているのです。この変化に注目しなければなりません。私も継続的に報告します。