【7つの緊急提言】新型コロナへの調達対応策

米国やEUなど各地で企業活動が停止しています。3月上旬までは調達網やサプライチェーン網の寸断を論じてきました。しかし、想像を遥かに超え、企業活動そのもの自体が機能不全にいたっています。サプライヤが止まった、自社の稼働率が下がっている、といったレベル、世界経済全体が異常な状況に陥っています。

さて、そこで、私たちは7つの緊急提言の形で調達部門の方々へ施策をまとめました。前半3つは私、後半の4つは牧野側の提案として掲載しますので、お読みください。

1.取引先への緊急援助

多くの中小零細取引先は、運転資金をほとんどもっていないと思われます。数ヶ月の売上が半減してしまうと、死ぬしかないのです。そこで、調達品の対価を現金で支払い、取引先の経営を支援することを提案します。

もっとも、自社に余裕があるとき、に限ります。しかし、それでも自社内の合意が取れない可能性があります。そこで、「調達品の対価を3%値引いてもらう代わりに、現金払い」といったような条件を取引先に持ちかけてはどうでしょうか。

現金さえ持っていれば企業は潰れません。これは資本主義社会において事実です。取引先の経営者であれば、3%の値引きの代わりに(あくまで3%というのは一例なので5%でも10%でもかまわない)、すぐさま現金が手に入るのであれば賛同するケースも多いはずです。中小零細企業の無利子・無保証融資が広がっていますが、同時に売上代金の回収も早めにしてあげる。

取引先の営業担当者レベルでは判断つきませんから、経営者レベルに相談してください。また同時に経理部門等と、そのような対応ができるのか相談しておいてください。対価は早めに払えばよいですが、倒産した取引先はもう戻ってきません。

2.既存人員の稼働率向上策

私は、ガラガラになった旅館やホテルの部屋を、政府が借りてあげるべきだと考えています。それは経営支援の側面もあるのですが、新型コロナ陽性反応者のうち、軽微な方々がそこで安静できるようにするためです。軽微な方が病院に行くと、病床が足りずに医療崩壊を起こといわれます。その前に、重症な方をしっかりと病院で看てもらうためです。

話を調達業務に戻します。

これから取引先の稼働率低下が予想されます。いっぽうでマスクはいまだに市中にありません。では取引先の稼働率を維持するために、マスクを生産できないか。いや、これはもちろん極論であるとわかっています。たとえばプリント基板を生産している工場で、明日からマスクを縫製しろといわれても、どうしていいかわからない。しかし不可能ではありません。

ここで言いたいことは、なんらかの代替物を生産することによって、なんとか自社や取引先の既存人員を有効活用できないか、ということです。いや、さらに極端な話、製造現場の方々と、「生産現場の改善手法」とか「原価計算のイロハ」といったオンライン教材を作成して、それを全世界に販売してもいいのです。「そんなことやったことがない」、もちろんそうです。だって、これまで経験したことのない新型コロナが世界を襲っているのですから。

3.テーマを決め組織人は学習を

お若い人たちはご存じないでしょうが、サブプライムローンショックのとき、何もやることがなかったので、工場ではみんなで草をむしったり、5Sの活動をやったりしました。あのころに苦労して考えた施策や復興策が活きた企業も多いものです。

ところで、話は変わるようなのですが、私は昨年「日本人の給料はなぜこんなに安いのか」という本を書きました。そこではあえて紹介しなかったのですが、「日本人の給料が安い理由は、人材のレベルが上がっていないから」という仮説があります。高いスキルを有する人材が多かったら、給料はあがるはず。残酷ですが、人材レベルが低いから給料が安いまま、という指摘はあるていど当たっているかもしれません。

だから、この時期を使って、組織の一員として、日ごろできなかった学習に取り組むべきです。忙しさを言い訳にできなかった学習(統計でもAIでも本業でも)を加速させることが、将来の終息後に活きてくるはずです。それに、緊急時には、国も自治体も組織も誰も個人を守ってくれませんからね。自分で生き残るために知的な体力をつけるしかありません。(坂口孝則)

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