はじめの一歩!調達・購買業務改革手法 5(牧野直哉)

今回も調達・購買部門における業務改革手法の切り口です。調達・購買部門の業務改革に際し、まず現状を正しく理解し、正しくあるべき方向を導く最初のプロセスです。

●問題と課題の整理

調達・購買業務を改革したい!ニーズが存在して、取り組みが実現する場合、まずは、調達・購買業務どんな問題点があるのか。を冷静に漏れなくダブることなく分析からはじめます。具体的なテーマ設定にもつながる重要なプロセスです。

いきなり「問題意識」は何か?を討議しようとしても難しい場合もあります。調達・購買メンバーが我慢強く、非効率な仕組みや標準的な方法論がない中で、独自の方法論で調達・購買業務をおこなっている場合など、今やっている方法しかなくて、あるべき姿を考えることすらおこなっていないのが実情です。

もし調達・購買業務改革をはじめておこなう場合は、まず

・嫌な(やりたくない)業務
・面倒くさい業務

といった観点で、該当する業務を調達・購買メンバーから吸い上げることからはじめてみます。たとえばさすがに今そういった人はいないと思いますが、メールが社内に導入されて間もない頃は、受発信のメールをすべて印刷してファイルしている人が少なからずいました。企業ごとに保存容量は異なるでしょうが、いきなり送受信したメールが消えることはありませんよね。そういった基本的な「仕組み」や、IT関連の仕組みを知らないが故に、非効率な手動作業をおこなっている実態って、実はまだ企業の現場では多いと感じます。

嫌で、やりたくない、面倒くさい業務とは、これから述べる具体的なテーマをもった問題よりもかなり前段階に存在します。本質的な調達・購買業務の改善に取り組む前に存在するやる気・モチベーションの阻害要因で、より便利に、ラクに仕事ができるかもしれないチャンスを失うのは本当にもったいないのです。

・QCDの問題点

といっても、嫌な、やりたくない、面倒くさい仕事といったテーマで何時間も話をするのも、これまたもったいない話です。「嫌な、やりたくない、面倒くさい仕事」は、

・すぐに改善できる=同僚が解決策を知っている
・改善には、原因を明確にして、解決策を設定する必要がある

の2つに分けて考えます。これは、討議や打ち合わせの前提条件として、最終的には少しでも効率的に仕事をするための取り組みとして、おこなっている討議を位置づけます。この2つを分けるときは、

・自分たちだけで解決できるか
・サプライヤの手を借りなければならないか

といった基準も有効です。サプライヤの手を借りる場合は、特定のサプライヤなのか、すべてのサプライヤに共通する話なのかによって、調達・購買業務全般に影響の大きい「すべてのサプライヤに共通する話」の優先順位が一般的には高くなるはずです。そういったディスカッションによって見いだされた内容は、QCDの3つの軸で分類します。

-Q(品質):調達・購買部門業務品質(確かさ、確実さ、信頼性)
-C(コスト):ムリ、ムラ、ムダ、手戻り、二重業務
-D(納期):スピード

・上位者/経営者ニーズ
続いて、上位者や経営者が調達・購買業務に問題意識をもっている場合も、当然あるでしょう。この場合、多くはコスト=購入価格にまつわる問題のはずです。あるいはD:納期の問題も想定しやすいテーマです。思うようにサプライヤから納入されずに自社の販売機会を失っている場合などは、コストが後回しになってサプライヤの納期フォローを徹底せよといった指令が出るかもしれません。

他の問題も同じですが、上位者や経営者からのニーズは、リソースが十分かどうかをまずは掌握します。その上で、リソース不足が発生原因と仮定できる場合は、人員の増強や、課題の優先順位付けをおこなって相談します。

・関連部門ニーズ
関連部門から調達・購買部門へニーズが寄せられる場合もあるでしょう。この場合、多くの要望は、何かとトレードオフの関係にあることを、要望した部門へ説明しましょう。たとえばサプライヤからの調達リードタイムを短縮するためには、期間によっては自社かサプライヤでの在庫化が解決策になる場合があります。在庫化は、正確な販売予測がおこなわれてはじめて機能する取り組みです。在庫化によるコストアップ要因や、在庫の死蔵化による廃棄コストの発生と、短納期対応ができずに失われる販売機会のいずれを優先させるのかです。販売アイテムによっても判断が分かれますが、トレードオフになってどうするか?といった討議が、関連部門と問題なく交わせる調達・購買部門であれば、解決への道が開けます。

今回まで、かなり駆け足で、まず着目すべき調達・購買部門の改革ポイントについてお伝えしました。問題ない調達・購買部門などありません。どんな企業の調達・購買部門も多かれ少なかれ問題を抱えています。部門の問題を個人レベルで解決するのは容易な話ではありません。しかしどうしようもなくなってから考えるのではなく、なにか問題あるな、仕事がやりにくいなと感じているなら、今改善/改革のスタートを切りましょう。どうせなら今よりいい調達・購買部門で働きたくありませんか?皆さまのご健闘をお祈りします。

(おわり)

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