住む場所と人生(坂口孝則)

私の尊敬する某ライターは、客観報道を是とします。さて、その某氏は、山手線のどの駅に美人が多いかを調べようとしました。しかし、どうやって定量化しようか。結論は、駅前を歩いて、自身が勃起した女性の数をカウントしたのでした。なんというアイディア!

私は、佐賀県、大阪、兵庫、栃木、そして東京と移りました。かつて東京の中野駅前に住んでいたのは、オタクの聖地ブロードウェイでマンガとサブカル本に囲まれるのを望んだからです。実際に仕事が多忙を極め、ブロードウェイには1年で2回しか行けず、職場近く四ッ谷駅前に引っ越しました。

地方に住んでいると想像がつかないものの、都会では住んでいる駅の名前で、そのひとをカテゴライズします。「へえ、お住いは広尾ですか。お仕事はIT系かメディア系か芸能系か自営系ですか」と、やたら「系」が多出します。私はコンサルタントなので「いや日雇い系です」というと、パーティーなどでさっとひとを散らせます(当社調べ)。また冬は海外に行くので「季節労働者です」というと、いわゆる港区女子は「そういうお仕事も世の中には大切ですものね」とワイングラスをもちあげ、体の向きを180度すっと変えてくれます(n=1)。若い読者は覚えておきましょう。

さてJRでいえば乗車人員トップは新宿駅で77万人にいたります。これは2016年度の数字で、ずっと1位をキープしています。実際には乗るだけではなく降りる人もいるため、この数よりもはるかに増えます。次は池袋56万人、東京44万人とつづきます。西では大阪駅が40万人、京都が20万人ほどですので、新宿駅の「偉大さ」がわかります。なお長野県にある平滝駅は乗車人員が一日7人ですから、カテゴライズどころかほぼ特定される状態です。

私はミャンマーに仕事でいくのですが、勢いを感じます。というのも、中国は原油の多くをアフリカのアンゴラから輸入しており、ミャンマーがそのルート上にいるからです。そして、ミャンマーを通じて輸出を試みています。やはりモノと人が行き交う線上にいると商売が生まれ活性化していきます。ハブとして多くの人を引きつける駅も、おなじく開発の中心となります。日本では、地価は銀座、東京、大手町、有楽町あたりの交通網の起点となる駅周辺は地価公示価格で㎡あたり1000万円を優に超えます。

街の魅力とともに、そこに住まう人口の観点からも見れば、23区の出生率(合計特殊出生率)でいえば、トップは江戸川区の1.39から、港区、葛飾区、足立区、中央区と続きます。逆に、ワーストは悪い順で新宿区0.97、杉並区、中野区、豊島区、渋谷区と続きます。もっとも日本全体が少子化なので、不動産の購入は慎重であるべきでしょう。

なお、自分がどこに合うかは結局のところ住んでみなければわかりません。引越し代も最近はネットで安価になりますし、敷金も探せばゼロ物件があります。所有物をできるだけ軽くして多くの試し住みをオススメします。私はちなみに6年で5回の引っ越しをしました。困ることは、たまに出版社からゲラが届かないことですが。どっかの駅の色に染まらないというも、人生の醍醐味ではないかと私は思うのです。

(了)

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