教養としてのコンビニエンスストア戦略パート2(坂口孝則)

<コンビニエンスストア各社の動向は、まさに日本企業の先端動向を示しています。ここでは調達・購買担当者を読者として想定しているものの、教養としてのコンビニエンスストア戦略をルポしていきます>

前回の連載はここからご覧ください(http://www.future-procurement.com/con1.pdf

・1-(1)-④その他、各社の女性ターゲティング施策

前回の連載で述べたもの(「主菜」「スープ」「スイーツ」)が三つが大きな柱となっているが、その他ここ1、2年で代表的な動きをあげる。

セブン-イレブンは人気アイスクリームチェーンのコールド・ストーンとアイスクリームを共同開発し限定発売した。同社はコールド・ストーンとの連携でこれまでも商品を発売してきた。これはとくに10代~20代の若年女性層をねらったものだった。
また、サークルKサンクスでは女性客のニーズをつかむために、「ごちそうデリカ」を拡充している。これは季節ごとの食材を使った惣菜で、店舗にあるフライヤーを使ってカウンター前で販売する。家庭の食卓にそのまま並ぶ食材を目指し、スーパーからの需要を取り込む。これは小口需要も同時に狙っていて、1パック100~200円ていどで、重量は約100gとしている。これからも同社は、女性を中心とした客層拡大を目論む。

そして、チェーン店を限定せずプライベートブランド商品でこのところ顕著なのが、パッケージに特徴を大きく表示方法だ。とくに女性層は食品にたいして比較優位性を求めるといわれるため、同層にアピールできるように「生きて腸まで届く乳酸菌入り」といったようにフォントを大きく表示する。これもおなじく健康志向の消費者にたいして、その健康メリットを強調するための工夫だ。

くわえて各社が力を入れるのは、シニアマーケットだ。おなじく各社の施策のうち代表的なものを抜粋してみよう。

1-(2)「シニア」を狙う各社の動向

セブン-イレブンはネオ「御用聞き」サービスを開始した。これは買い物弱者ともいわれる高齢者層にたいして食事などの宅配を行うものだ。セブンミールから注文すれば近隣店舗が届けてくれる。セブン-イレブンでは、リアル店舗とネットなどをシームレスにつなぐ「オムニチャネル」化を進めている。ネットで注文したものをリアル店舗で受け取ったり、リアル店舗に欠品していた商品もその場で注文し自宅で受け取ったりできる仕組みを作っている。米ウォルマートが先行するオムニチャネルだが、今後、セブン-イレブンも同種の施策を進めていくだろう。

また、ローソンは有料老人ホームに併設した店舗で高齢者向けサービスを開始した。佐賀市にあるローソンミズ木原店では、調剤薬局を抱え、商品ラインナップとしては介護関連商品や杖(!)、そしてカツラ(!!)までを揃える。

ファミリーマートも高齢者向け宅配事業で先行するシニアライフクリエイトを買収し、ファミリーマートの弁当などをあわせて届ける仕組みを構築している。ローソンも佐川急便とタッグを組み、買い物弱者対策を進めている。

その他の動きとして、サークルKサンクスは、女性とシニア(とくに高級志向をもつシニア層)向けに弁当販売を拡大するために、2013年よりデパ地下の惣菜売り場を手本とした施策を展開している。文字通り、手に取った瞬間にデパ地下のような高級感を醸成する目的で、デパ地下に強い業者とも連携した。

またシニア層をターゲットにしたコンビニ各社は、おせち料理も変容させている。コンビニ各社は年末に「お一人さま用おせち」を発売して話題になった。セブン-イレブンがはじめた当コンセプト商品は、ファミリーマートとサークルKサンクスにもひろがった。これは単身者需要だけではなく、シニア層をターゲットにしたものだった。セブン-イレブンは、セブンミールなどを通じて高齢者からの注文を集め、またサークルKサンクスは「華GOZEN」という1980円の低価格おせちで訴求した。

・2.商品トレンド「健康志向」

これまで述べたとおり、コンビニ各社が女性とシニアをターゲットに据えたとき、商品全体の健康志向トレンドが必然となった。各社とも、カロリーオフ商品、有機栽培、オーガニック、といったキーワードを全面に出すようになった。

そのなかでも、この動きを意識的に加速しているのはローソンだ。「マチのほっとステーション」から「マチの健康ステーション」へと、ローソンはセルフメディケーションを事業の柱に打ち出した。医薬品の販売を開始する店舗を増やしたり、テレビ電話による健康相談も行ったりしている。さらには一部自治体と提携し、健康診断の受付窓口も担っている。ローソンは、事業そのものを健康主体に切り替えるという、きわめて成熟社会的企業と評することができる。

その特徴は商品にも表出している。ローソンは2014年末に特定保健食品の許可を受けたパンやざるそばを発売した。糖質を抑えたパンや、血糖値を抑えるそばで、それら「ブランシリーズ」は同社のヒット商品となっている。これらは調理方法の工夫にくわえて、製粉会社と組んだ材料開発のたまものでもある。糖質制限の必要な消費者からの人気は高く、圧倒的なリピート率を誇る(公正に付け加えれば、これはローソンだけではなく、たとえば人気の商品として、糖質を抑えたファミリーマートの「国産小麦のブランロール」などがある)。

これからも健康志向商品はたえまなく開発されていくだろうし、ファミリーマートが薬局とコンビニを併設するように、業態や店舗設計としても健康をキーワードとしたものが増加していく。

=コンビニエンスストア各社の動向から日本のいまがわかる~この連載つづけます=

<つづく>

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい