ほんとうの調達・購買・資材理論「調達関係者に絶対に役立つ統計講座7回目」(坂口孝則)

さて今回も実務で使える統計について説明していく。

今回のテーマは、「それって効果あるのか?」を検証する方法だ。これにはt検定とかF検定とかっていうのを使う。統計では、この「検定」っていうのをやるんだけれど、これがほんとうにわかりづらい! 書いている側も、「説明すんの難しい」と思って書いているからなおさらだ。私はだからこれまで同様に、実務家が知っておくべき内容のみを<易しく>書いていこうと思う。

今回のエクセルファイルはこれだ!

http://www.future-procurement.com/z111.xlsx

で、「それって効果あるのか?」を検証する方法といった。今回は、まず簡単な例から取り上げるよ。たとえば、こういう場合はどうかな? 調達部で資格制度取得を目指したとする。翌年度にすべての部員が資格をとった。そこで、資格をとったあとと、とる前との比較をしてみた。その資格制度は調達品コスト削減にかかわるものだから、コスト削減率で比べてみた。まあ、こういう前提としよう。これは実際のいかなる調達資格制度とも関係がないからご容赦を。

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こういう結果になったとしよう。つまり調達部員がいて、C列が「コスト削減率」を示している。彼らが資格取得した後にD列「資格取得後のコスト削減率」を叩きだした。私は調達関係のコンサルタントだから、もちろんコスト削減にはさまざまな要因がからむのは知っている。市況や、物量が大きな要因のはずだ、ほんとうは。

だけど、これはあくまで例だ。この例はコスト削減率は全員に等価だとする。またこの例としてはコスト削減に資格(とその勉強)が役立つと仮定する。

「役立つと仮定する」とは書いた。でも、これはほんとうに資格が役立ったんだろうか。すぐに考えつくのは、コスト削減の単純平均だ。

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ついでに、「標準偏差」や「分散」も出しておいた。たしかに5.31%から7.18%に向上しているので、資格取得は役立っていると思われる。

でも、たまたまコスト削減率があがってしまった可能性はないだろうか。偶然、そうなってしまったとしたら、資格は役に立っていないかもしれない。

そこでなんだけれど統計では、次のようなややこしい考え方を採用する。ここだけ、我慢して読んでくれ。そのあとに、単純な見方を教えるから。それは、

・対立仮説:効果があったんだ!という仮説
・帰無仮説:効果なんてなかったんだ!という仮説

を作って、そんであえて「帰無仮説」の可能性を追求する、っていう方法を取る。

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つまりね。さきほどの例でいうと、実際のところコスト削減率の状況は何にも変わっていないのに(全体の分布形状は何も変わっていないのに)、たまたま良い結果を選んでしまった可能性を検定するのだ。

で、その可能性のことをp値(ぴーち)という。難しくいおうとすれば、帰無仮説が成立する確率だ。

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なぜだかp値には5%って数がよく使われる。だから、そのp値が5%以上だったら、その当てずっぽうは正しいのだ。つまり、たまたまじゃなく、それくらいのズレはよくあることなんだ。通常の分布範囲だ。前述の例でいえば、資格制度は効果がなかったことになる。偶然、コスト削減率の平均値がよくなったにすぎない。

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逆に、そのp値が5%以下であれば、(資格制度が何も役立っていないのに)たまたま良いデータを拾っちゃう可能性は、相当なくらい低いといえる。だから、逆にいえば、資格制度の意味はあった、役に立っている、と思える。

これを統計では「棄却する」という。

・ここの箇所はさらに興味あるひとのみ読んでほしい!

また、この検定には「片側検定」っていうやつと、「両側検定」っていうのがある。

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同じ5%の検定だったとしても、文字通り、片側5%を考えるか、両側2.5%ずつを考えるかで違うわけだね。なんとなくわかるけれど、片側とか両側ってどういう意味だ!と思うだろう。でも、ここは単純にこう考えてくれ。

・両側検定は、単に違うか調べたいとき!
・片側検定は、良くなったり悪くなったり、大きくなったり小さくなったり、効果あったりなかったり、を調べたいとき!

ああ、これはほんとうに雑な説明なんだけれど、実務的にはこれでOKのはず。

・さて話は戻って、資格効果の話だ

ここで冒頭の例に戻ろう。資格が効果あったのかどうかっていう話だった。さきほどの片側とか両側っていう話は「興味あるひとのみ」って書いたけれど、その前に書いた、「対立仮説」「帰無仮説」を思い出してほしい。

・対立仮説:効果があったんだ!という仮説
・帰無仮説:効果なんてなかったんだ!という仮説

今回にあてはめると、こうなるよね。

・対立仮説:部員に資格取得させてた効果はたしかにあったんだ!
・帰無仮説:部員に資格取得させても効果なんてなかったんだ!

さらに繰り返すと、このうち帰無仮説の可能性を探っていく。

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ここでExcelの「データ」→「データ分析」→「t-検定: 一対の標本による平均の検定ツール」を選択してほしい。このt検定とかっていうのはおいおい解説する。それで、

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「変数1の入力範囲」に以前のコスト削減率を選択、「変数2の入力範囲」には資格取得後のコスト削減率を選択する。そしてラベルにチェックをいれる。出力先は任意で選択してほしい。

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すると、結果が出るんだけれどね。ここで注目してほしいのは、「P(T<=t) 片側」っていうところの値。

0.00000409

っていうものすごく小さな値が載っているよね。これがp値だ。「帰無仮説:部員に資格取得させても効果なんてなかったんだ!」そしてサンプルは「たまたまコスト効果があったようものを抽出しちゃったにすぎない」という可能性が、0.00000409しかない、と指している。つまり、p値<5%だから、この帰無仮説は棄却する。

……ということは? そう、「対立仮説:部員に資格取得させてた効果はたしかにあったんだ!」が正しいことになる。このケースで言えば、もちろん費用対効果もあるだろうけれど、資格を取得させることでコスト削減率は向上したのだ! さらにいえば、「t」と書かれた数字の絶対値を見てほしい。「6.04352」だ。これは「t 境界値 片側」が1.7291よりもだいぶ大きい。この境界値を超えるとなかなかめったなことは起きないとされる。その数字の対比からもこの資格の意味はあったことになる。

ややこしいかな? そうかもしれない。なんで面倒臭ければ、こう考えてほしい。

・まずは二つのデータを対比させよ
・「t-検定: 一対の標本による平均の検定ツール」を選択せよ
・片側p値<5%ならば効果ありと思え!

実は、ほんとうはちょっとだけ我慢してお聞きいただき、このt検定のやり方をご理解いただければ、もっと多くの検定が可能だ。それは次回以降やっていこう。

(つづく)

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