連載企画「速読は儲かる」第5回(坂口孝則)

<前回からの続き>

本――、速読によってお金を稼げないのであれば、たしかに私はみなさんに幻想を持たせるのは悪だろう。でも、私が実際にやってお金を稼いでいるので、それは確信をもっていえる。逆に、たかが本によって多くの可能性が広がるのも事実なのだ。それを伝えないともったいない。私はほんとうにロクでもないグズだった。しかし、私はグズにとどまりたくなかった。あなたも劣等感をいだいているなら、そのグズ状況から脱してみないだろうか。

私はほんの少しでも本を速く読めることによって、稼ぎの機会がものすごく広がることを話しておきたい

<今回はここから>

日本のビジネスパーソンは、情報が入らない状況にある。

それが私の偽らざる感想。

「そんなはずないだろう!」と思うに決まっている。いまではパソコン経由でどんな情報もとれる。ソーシャルネットワーキングサイトであるTwitterやfacebookで次々に情報が流れてくる。

そのとおりだ。いまでは、これまで集めるのが困難だった情報が次々に収集できるように思える。

一人ひとりのビジネスパーソンが得られる情報が拡大したのは紛れもない事実。いまでは情報化、なんて言葉も当たり前すぎて言うのが恥ずかしいくらいだ。

だけどね。しかし、これだけ情報化したはずの日本人ビジネスパーソンの生産性はどうか。日本経済が復活しているかというと、それはかなり怪しい。アベノミクスで株価や通貨はわからないけれど、企業の収益性が劇的にあがったなんてきいたことがない。それに、考えてみて、どう? ネットがあったときと、なかったときを比べてどうだろうか。もちろん、資料作成のときにネットからネタを拾うケースは多くなっただろう。だけど、それが根源的な仕事の優位性に、はたしてつながっているだろうか。

たとえば、ビジネスパーソンの論理的思考力はどうだろう。仮説構築力はどうだろう。文章力はどうだろう。これら、ビジネスパーソンにとってもっとも重要だと考えられている(そして考えられていた)能力は、劇的にあがったといえるだろうか。

これらの話には反論がある。たとえば、
・インターネットは情報を与えるものであって、思考力を与えるものではない
とか
・インターネットでは事実がすぐにわかるから仮説構築力には役立たない
とか
・スマホでは文章を読むものであって、文章力を鍛えるものではない
とかね。

でも、そういう特徴がインターネットにあるのはわかる。

でもね、ということは……。

論理的思考力、仮説構築力、文章力といった能力が向上できないのは事実なんじゃないかな。もっとも必要な能力を構築できないのは、正しいんじゃないかな? たぶん、昔の日本人ビジネスパーソンはネットだけを信仰する現代ビジネスパーソンを憂いているに違いない。

だけど、日本人はもともと論理的思考力、仮説構築力、文章力が苦手ではない。われらが、ソニーやトヨタ、パナソニック、ホンダといった企業のビジネスパーソンたちは、それらを用いて世界中を席巻した。昔の現場改善力っていったら、いまと比べものにならないほど高いんだよ。現状をしっかりと分析する力、そこから改善策を創出する力、そしてそれを図や文で説明する力。

私たちの先輩たちは、情報が限られているぶん、目の前の情報をじっくりと考えていた。少ない情報を考えぬいて、なんらかの光を求めていた。逆にいまの私たちは、情報過多のなかで、その情報の多さのみに満足しているように思える。

「昔には昔のやり方がある」

そういう意見があることは否定しない。それに、それはある意味正しいんだろう。

だけどね、ここで考えてみてほしい。どんな情報がネットに流れたり、あるいは社内のサーバーやメールで流れたりしているんだろう。

いまは注目至上主義の時代だ。

ちゃんとした情報よりも、中身よりも、本質よりも、人目につくことこそが重要視されている。もちろん、私もネット媒体で連載しているから悪口ではない。ただ、ほんとうのことだ。じっくりと時間をかけて読まなければいけない内容はネットに不向きだ。なんども読み返したり、メモしたり、本を閉じて思考にふけったり。そんな内容をネットに求めても利害と合致しない。ネットはとにかく訪問者数とレビュー数を増やす。

これはネットだけの特徴ではないかもしれない。最近は、プレゼンだけが上手で中身はまったくたいしたことのない若手が増えていると、先日、某社の老部長がいっていた。でも、そのプレゼン上手の多くは高評価を得ているケースがある。

話を戻そう。

そのようにしてネットやスマホから流れてくる情報だけで、さもじゅうぶんのように思うものの、足りない。なおのこと、プロフェッショナルとして体系だった知識を得ようと思えば、ネットを起点とした情報ではダメなのだ。

「それは正しいのか?」と思うかもしれない。「だって、いまではネットで連載されていた内容がそのまま専門書になっているじゃないか」と。

うん、そのとおりなんだ。そういうケースもある。だけど、そういう例はまだ少ない。書籍を読めば、その何倍もの知識と出会える。

それに、硬派な内容こそネットに書かれない、もう一つの理由があるんだ。それはね、簡単にいえばネットでは書き手が儲からないんだ。まだ書籍にして印税化したほうがお金になるんだよ。しかも、ネットで稼いで、書籍でも稼げるひとはまだ少ない。専門書を書くようなひとたちはやはりネットよりも書籍が活躍しやすい。これは事実だ。

しかも、どうしてもちゃんと知識体系を伝えようとすると、ネットには書けない。読むのに50時間もかかる文章って、画面で読める? そりゃ読めるひともいるよ。だけど、一般的には難しいだろう。ところが、書籍だったら200ページでも、300ページでも不通に存在する。500ページ、あるいは600ページのものもあり、こういう本こそ、ほんとうに役立つ。

ネットにはない切り口。そして何人もの目を通過している(著者・編集者・校正者)だけあってたしかな信頼性。しかも著者は命を削って書いているから、役立つ内容が多い。ちょっと乱暴な言い方をするけれど、ネット用の原稿と、書籍用の原稿とでは、気合の入れ方や注意のレベルが違うんだよ。

あとね、たとえば英語圏以外で、これほど本が出ている国は珍しい。おそらく多くの読者は海外旅行に行った経験はあるだろう。そのなかで、その国の言語で本がこれほど発行されている例を見たことがあるだろうか。日本語くらいない。他の言語ネイティブのひとたちは、がんばって英語文献にあたるしかない。それだけ日本は恵まれている。もちろんそれは逆に日本人を英語ベタにしている要因ではあるけれど。その恵まれた環境を使わないテはない。

他の国だととても採算があわない本も日本語では売られている。さきほどから専門書を勧めているけれど、300ページとか600ページくらいの本でも読み方さえわかればスラスラ読み進められるのだ。諦めるのはもったいない。

私の人生を変えた本

本を他人に勧めるとき、面白いものを勧める。でも、劇的に面白かったら勧められないんだなあ、これが。だって、その本を自分のものにしたいとすら思うから。でも、ここでは、その意味で私のバイブルを紹介する。私の人生を変えた本をあげると……。

決定版 ほんとうにわかる管理会計&戦略会計
公認会計士の高田直芳さんがまとめた管理会計の決定版。管理会計の基礎から応用までを、これ以上に丁寧・親切に伝えるものはない。しかも、面白く、ファイナンスとのつながりまで解説されている。私はこれまで高田先生からどれほどのインスピレーションをもらっただろう。いや、高田先生がいなかったら、私の調達・購買における管理会計アプローチはなかったのではないか、とすら思える。
調達・購買人員は、会計からは何も学ぶものがないという思い込みがあるので、誰も学ばない。おそらく私だけがこの領域から宝を入手し続けるだろう。

アナーキー・国家・ユートピア―国家の正当性とその限界
鬼才ロバート・ノージックが国家成立の原理までをえぐり、アナーキーの可能性とその否定、代替策までを考えていく傑作。おそらく、政治学の本を読むよりも、この一冊を熟読したほうが得るものが100倍ある。政治システム、そして国家の枠組みについて、この本が多くの元ネタになっている。
逆にいえば、派生本よりも元ネタを読んでおくべき。元ネタを押さえているかで、だいぶ教養の厚みが異なる。おそらく、この本で相当な会話ネタになっていると思うのだが。

その他、
理由と人格(デレク パーフィット)
実学 中小企業のパーフェクト会計(岡本吏郎)
〈私〉の存在の比類なさ(永井均)
黄金の扉を開ける賢者の海外投資術(橘玲)

……などなど。本当に良書に出会えるかは、ひとの命運を左右するといってもいい。ただ、多くのひとは本を読めないからといって、その出会いをはじめから拒否している。それって哀しいことじゃないだろうか?

よってここで解決策を述べる。

とりあえずでたらめに、目につく本をすべて読めばいい。「なにい、一冊読むだけでも時間がかかるのに、すべて読め!なんて、時間が足りない」。そう思うあなた。大丈夫。方法を教えるから。頭の良さは平凡でも、そしてこれまでの読書歴がなくても、誰だって速読できる方法がある。もちろん、ある程度の漢字は読めなければいけないから、中学生以上ということになるだろうか。

書籍を読みこなして活躍したい! と思う気持ちさえあれば大丈夫。あなたは一気に膨大な情報源にたどり着くだろう。

日進月歩で進化している世界にアクセスできるのだ。

他の人たちができていないので、できるひとにとっては、莫大なビジネスチャンスが眠っている。そして、まずはその世界に飛び出す楽しさを感じることだ(当連載は続きます)。

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