不変×(かける)変化で何を生むか(牧野直哉)

まず、ある企業のコスト削減活動を紹介する記事をご紹介します。

「全国××ヶ所の工場で製造コスト切下げ作戦を展開し、月間約二〇億円の低減を行う。そのためVAを省資源、省エネルギー、省力の二つの面から推進していく。適用技術として設計仕様の改善、代替品の活用、生産工程の改善、部品の標準化、包装材料の有効活用など総合的に適用している。材料費高騰や人件費上昇による製品原価の上昇を、工場の総力をあげて阻止するために、ライン、スタッフ一体となって衆知を結集したタスク・フォース活動は、随所に固定観念を打破し、原価低減に飽くなき追求を繰り広げて不可能を可能にしたのである」

これは日本の大手メーカーの活動を紹介したものです。この記事は、昭和51年「旬刊経理情報」7月発行分に掲載されました。昭和51年は1976年。まだ石油ショックの衝撃が色濃く残る中で、ひたすらに高度成長の恩恵を享受してきた日本企業が、さまざまな削減活動を全社的に取り組んだ時期です。

そして先日、同じ企業で最近開催されたサプライヤーミーティングの資料を読みました。驚き、しばし考えて納得したのは、ほぼ主張している内容が同じだった点です。すこし言葉遣いに違いはあります。しかし「改善」や「部品の標準化」、「固定観念の打破」といった言葉は、37年を経過した現在でも積極的に使用されています。したがって、企業(製造業)がコスト削減に取り組む際、そんなに多くのテーマはないのです。限られたセオリーであるテーマを、どれだけ繰り返し継続して取り組んでいるかが問われるのです。

一方、働く人々が活用するツールは大きく変化しました。調達購買部門におけるテーマは変わらなくても、当時と違ったツールを活用すれば、違う結果を導ける可能性はあるのです。ツールの活用とは、これまでのやり方を新しいツールへ当てはめたり、押し込んだりするのでなく、ツールの特徴を生かしたやり方・方法・実践論そのものの変革です。例えば個人でも、37年前と今とを比較すると、できなかったことができるようになりました。瞬時に画像や映像を送って観たり、どこにいても連絡が取れたりは、37年前でなく、20年前の私が新社会人だった頃でも夢物語でした。夢が現実になった今、どのように効果的に使うのか。普遍的なテーマに新しいツールを活用するかが問われているのです。

<了>

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