ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)
・25のスキルと知識がバイヤーを変える
今回も、「調達・購買担当者として必要な25の知識・スキル領域」のマトリクスをもとに説明していく。この連載では、25のスキルを一つずつ解説している(新規購読者の方々はバックナンバーを見ることができるまで、1ヶ月お待ちいただきたい)。
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今回は連載の11回目だ。今回は、「調達・購買業務基礎」のD「市場調査」を説明したい。
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かつて調達・購買とは情報調達に近いといわれていた。調達・購買とは、市場のなかから自社に役立つ発意を集め、それを製品という形で還元していく。他部門よりも、市況に詳しい必然があるというわけだ。
もちろん、市場調査といっても多くの法法がある。また、集める情報も業種や業態によってさまざまだ。そこで、ここでは汎用的な内容を扱っていきたい。
・市場調査準備として
まず、昨今では検索エンジンの活用が欠かせない。何を調べるにしても、インターネット検索と無縁ではありえない。そこで、準備編としてGoogleをあげておく。
ここで、調査対象の詳細を知ることができる。また、Google TrendsやGoogle alertsで、自身の仕事に直結するキーワードを設定しておけば常に(インターネット上の)最新情報に触れ合うことができる。また、アメリカの議会図書館はインターネットアーカイブを進めている。これは、要するに、インターネット上の情報をひたすら収集し保存しようとする取り組みだ。かつて、日本の女性アイドルが、デビュー前にインターネット上のプロフィールサイトに彼氏との過激画像をアップロードしていたことを暴露されたことがあった。それは、これらインターネットアーカイブサイトで保存しているためだ(その女性アイドルはデビューと同時に写真を抹消していた。しかし、アーカイブされて残っていたわけだ)。
また余談になるものの、資料を作成するときには「chart chooser」というサイトを使えば良い。これは各チャートの種類を提示し、各資料に最適なものを教えてくれるものだ。
そして、業界のトレンドを知る方法についても触れておく。みなさんは、何かの産業が勃興するとき、どのようなトレンドを察知するだろうか。もちろん、メディアで取り上げられることが多くなれば、それは一つのサインだろう。よりテクニカルな観点は「対象者(対象顧客数)が30万人を突破」することだ。たとえば、趣味でも、患者数でも、なんでもいい。ある領域のひとの数が30万人を突破するとき、そこに新産業が誕生する。100万人を突破するときには、すでに産業が成熟期に入る。
これは本稿の主旨とは異なるものの、独立起業しようとするひとは、この30万人という言葉を覚えておけばいいだろう。何かのサービスを販売しようとするとき、新規勃興産業を30万人突破しているものから探すのだ。検索エンジンで「30万人突破」などと入力し、トレンドを見てみる。そうすれば、宝くじを買うよりもずっと高い確率で飯のタネを探すことができるだろう(ちなみに、この方法を私は実際に商品販売において使っているが、それは別の機会に説明しよう)。
加えて、市場全体の状況感を得るために、参考ページとして「MyEL」と「vizoo」をあげておく。
・市況調査あれこれ
市況調査のサイトも列記しておこう。
・時系列統計データ検索サイト:日本銀行が提供しているサイト。超便利。画面中ほどにある「物価関連(PR)」からさまざまな材料の市況推移について調べることができる。
・LME
・CRB指数:原油、無鉛ガソリン、暖房油、天然ガス 等19品目で構成された世界的な商品市況。おおよその商品市況を把握することができる。
また、サプライヤの利益率などを調べるときに、その相対的な位置づけを知るためには、財務省が提供している「法人企業統計」を見れば良い(「時系列データ検索メニュー」)。
そして、海外調達を検討する際に、各国の「賃金レベル」「地価・事務所賃料等」「通信費」「公共料金」「税制」等について検索が可能なサイトが、JETROの提供している「投資コスト比較」だ。水道料金の比較など、誰が見るのか……という気もするけれど、無料で提供されているこれらの情報を活用しないテはない。
ほとんど語っているひとはいないけれど、JETROのページに加えて、各国事情をもっとも把握できるページはCIA(あのCIAだ)だろう。私はこのなかの「THE WORLD FACTBOOK」以上に充実した各国ガイドを知らない。旅行先を検索するのにも使える(民間がやっている旅行サイトよりもよっぽど詳しい各国基本情報が載っている)。
・各社の調達・購買戦略
そして、最後に手前味噌なれど、各社の調達・購買戦略を共有するうえでも、「購買ネットワーク会」を紹介しておきたい。購買ネットワーク会とは、各社の調達・購買担当者・マネージャーが730名ほど登録している有志の組織だ。これまで、各社の最前線の情報を交換しあってきた。
毎月さまざまなイベント、学習会でベストプラクティスを披瀝している。同時に、ISMやCAPSでも情報を入手できる。
これらさまざまな情報にふれ、自ら解釈しなおすことが、調達・購買担当者の役割であり、情報購買の基礎となるだろう。
これ以降、次回もお楽しみに。
<つづく>