7月7日トークライブ「これからの夢を語ろう。それは、これからの日本と調達・購買についての夢だ」で話したこと。坂口編パート2(坂口孝則)

・「面白い意見を言うには」

トークライブ「これからの夢を語ろう。それは、これからの日本と調達・購買についての夢だ」in 日本能率協会大阪2012年7月7日

今ますます「発言力」が重要になってきていると思います。単なる情報であれば、検索エンジンで調べることができる。そうではなくて、情報を元に、何を言うかが問題なんですね。

たとえば、芸人のスギちゃん(笑)。あのひとを見るたびにドキドキします。フリートークが下手すぎて(笑)。ほんとうに2012年を乗り切ることができるのか。これは会話の対応力と言い換えてもいいかもしれません。テレビ番組ではこの対応力が問われます。

ちょっと余談ですが、実はダウンタウンの漫才というのは一つの革命だったと思います。島田紳助さんは、ダウンタウンの漫才を「8ビート漫才から4ビート漫才への移行」といいました。つまり、それまでの漫才師は、舞台に出てきて、あるタイミングから一気にネタを開始しました。どこまでが前フリで、どこからがネタなのかがはっきりしていた。しかし、ダウンタウンの漫才は、どこから漫才で、どこまでがチンピラの(失礼!)雑談なのかがわからない。ダラダラと話しているように見えて、いつの間にか漫才が始まり、会場は爆笑している。

全体がアドリブのように見えるのですね。これは時代にも合致した。テレビ番組は、スポンサー料の低下によって、じっくりと時間をかけたドキュメンタリーやドラマ、情報番組を作ることができなくなったわけです。そこで芸人と文化人を集めて、ちょっとの台本でフリートークをしてもらうしかなくなった。そのときに、ダウンタウンは、そもそもアドリブのかたまりのような人たちですから、合致したわけです。そこから、テレビに出る人たちの第一要素は、対応力と発言力になっていきました。

ところで、松本人志さんのような天才であれば都度みんなが面白いと思う発言ができるでしょう。しかし、私たちはそうはいかない。なんらかの戦略がなければいけないのです。

つまらない意見というのは、「誰でもいっていること」を繰り返すことです。ただ、対極にある、気が狂った意見というのは、「理屈もないこと」です。基地の外にいるひとたちがこれですね。面白い意見というのは、その気が狂った意見と、つまらない意見の中間にあります。「理屈はあっているけれど、なんか納得できない」「理屈はあっているけれど、それよりも、そんなことよく思いついたな」とひとびとが感じてしまう種類のものです。

そこで、最近、私(坂口)はテレビなどでコメントをする機会が多いのですけれど、このようなテンプレートを作成しました。

http://bit.ly/Q3NyvK

これをもとに、世の中の意見を分類してしまうのですね。そうして、もっとも少数派の意見を語る。そうすれば、面白い意見が誕生します。

これは、対象がなんであれ、ひとの意見は何らかの分類ができるという思考に基づいています。構造主義的な考え方といってもいい。このテンプレートは「~は~だろうか」という問いがあって、それに面白い意見を述べるわけです。

抽象的すぎるので、例題を作ってみました。「他国が攻めこんできたら日本は自衛できるのだろうか」とセンシティブな問いですが、これであっても、テンプレートにあてはめればこれだけの意見が創出できます。

http://bit.ly/Q3NAUg

まあ、必ずしも面白い意見を無理やり作る必要もないかもしれませんけれども。「このひと面白いな」って思ってもらえることが、人生の喜びのうち大きな割合を占めるのではないでしょうか。なので私のコメント術と思考法についてお話しました。

・これからの企業と調達・購買部門のあり方

ところで、話を変えますね。まったく別の話です。最後が近づいてきましたので、予定の二十分の一くらいしか話せていないんですけれど(笑)、重要なことをお話しておきます。

実はこういう本があるのですね。「1か月で3億円稼ぐ ジョイント思考」。内容は、ネットビジネスの話なんです。なので、買っていただく必要はありません。

1か月で3億円稼ぐ ジョイント思考
佐藤 文昭 小島 幹登
4860635108

しかし、この本のなかで、きわめて面白い考えが述べられているのです。「フロントエンド」と「バックエンド」の意味が変わっているという話です。これは興奮したのでお話させてください。

これまで、「フロントエンド」と「バックエンド」の意味はなんだったでしょうか。これらは企業のもつ商品群の分類です。「フロントエンド」とは低額商品のことでした。そして、「バックエンド」とは高額商品のことです。つまり、最初はすごく安い金額でお客に買ってもらって(「フロントエンド」)、そのあとに利益のあがる商品(「バックエンド」)に誘導するということです。

たとえば、最初は無料セミナーをやって人を集めて、そのあとに高額セミナーを売り込む人たちはたくさんいます。無料相談から、顧問契約に結びつけることもあります。ヒゲソリなんてのもそうじゃないでしょうか。本体はすごく安い。しかし、替刃と洗浄液が高い。そこで儲けるわけです。法人営業でも同じです。最初はすごく安い金額で売り込んで、徐々に高い製品を販売していくのです。

そのように「フロントエンド」と「バックエンド」は、あくまで一つの企業のなかで揃えておくことが当然でした。しかし、と本書の著者はいうのです。「一つの企業をまるごとフロントエンド商品にしてしまえばいい」と。私は驚きました。じゃあ、儲からないじゃないかと。2年ほど前に話題になった「フリー」であっても、けっきょくはバックエンド商品で儲けることを狙っていたわけですからね。

フリー〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン 小林弘人
4140814047

そこで、「1か月で3億円稼ぐ ジョイント思考」の著者は、違う会社を「バックエンド商品にすればいい」というのです。これは面白い発想だと思いました。「フロントエンド商品である企業」は、自分たちが運営して、人を集めるだけ。それで何をやるか? 「優秀な」ひとを集めるらしいのです。「フロントエンド商品である企業」では、安価な金額でセミナーを開催し、起業・ビジネスモデルのエッセンスを伝えるらしいのですね。その受講者のなかから、「このひとは優秀だ!」と思うひとを見つけて、その人に出資して会社を作らせるらしいんですよ。

そうすると、そのひとは必死で頑張る。会社が成功する。そうすると、出資者(つまり「1か月で3億円稼ぐ ジョイント思考」の著者たち)には、配当金が振り込まれるというわけです。働かずしてお金になる。これが究極のバックエンド商品だと。

この考え方は大変面白い。というのも、これまで、「フロントエンド」と「バックエンド」は同一企業のなかで成立すると思われていた。しかし、同一企業のなかにある以上は、どちらを販売するときでも、自分たちが働かざるをえない。だけど、企業がわかれてもいい、と考えれば、いくらでも「バックエンド企業」は複製できるのです。そうすれば、さきほど述べたとおり、働かずして配当金がもらえる。なるほど、これならば、1ヶ月で3億円は稼げるな、と思ったんです。

ここから、あえて議論を飛躍させますね。

実は、これからのキーフレーズは「フロント」と「エンド」の融解だと思っているんです。これまで一企業単位で考えていた「フロント」と「エンド」の意味が変わってくるのではないか。そういうことです。そして、それは調達・購買部門のあり方にも影響を与えるはずです。

話が抽象的ですみません。例を出します。「フロント」と「エンド」を、企業内の営業・調達と言い換えたらどうなるでしょう。あるいは設計と調達でもかまいません。その境界を企業内ではなく、複数企業に渡るものだとしたら? 開発購買などを実施するときに、企業の枠を超える思考がありえます。別に企業内の調達部門とのみ開発購買を行わねばならない理由はない。

スマートフォンを生産している某ナンバーワン企業がそうです。これまで開発購買といったら、企業内でやるものでした。それを、「フロント」と「エンド」の境界を企業外に開放した某社(ええい、もう面倒なのでアップルといってしまいましょう)は、サプライヤの調達部門とともに開発購買を実施しています。そしてサプライヤの開発設計部門も参加します。

これまで企業内の開発購買といっても、調達部門は開発部門の御用聞きていどしかできませんでした。それにたいし、アップルは企業の垣根を超えた開発購買を行うことでさらに深いレベルでの商品開発を狙っているのです。

これは「部門横断プロジェクト」時代の終わりを宣言しているのかもしれません。これからはもう「企業横断プロジェクト」に移行してきています。それは日本ものづくりが得意としていた垂直統合型の企業横断ではありません。より柔軟に企業間が連携する、水平分業型の企業横断プロジェクトです。

私は垂直統合型から水平分業型に移行することが日本製造業が生き残る道ではないかと思っています。また、調達・購買部員の生き残る道があるとしたら、水平分業型のコーディネーターとしてではないでしょうか。いまだに日本の調達・購買部門は、サプライヤをコンポーネンツ供給企業としかみなしていません。欧米の企業が、その垂直統合型から脱皮し、水平分業構造においてEMSの管理戦略を構築しているのに、です。

境界が消え、生産や開発が複数企業にわたるとき、たとえば日本のバイヤーでEMS管理のノウハウを持ったひとはいない。そこらへんに、今回のテーマである「日本と調達・購買についての夢」も横たわっている気がするのです。

引き続き情報発信していきますので、よろしくお願いします。

それでは続きは懇親会で(笑)

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