坂口孝則の「超」調達日記(坂口孝則)
■6月X日(月)■
・MBAを取得中の知人と会談。うん、想像したとおり、MBAのテキストといってもたいしたことがない。コトラーやポーターであれば、自分で教科書を買って学べば良い。「異業種のひとと付き合うと新たな発想が生まれる」というひとがいるけれど、ほんとうだろうか。さほどたいした発想が生まれたことがない。やはり、新たな発想とは個人が必死に考え続けた末にしか生まれない。安直な発想でよければ、本を読んでいるほうがよっぽど効率的だ。
・しかし、唯一のメリットを見つけた。「金持ちの外国人と知人になれる」「しかも、起業率が高く、将来のビジネスチャンスにつながる」こと(ああ、唯一じゃなくて二つか)。これは良いね!
・ということで、早稲田か慶応か、一橋か、北京大学か、どこかで修士課程を取得しようかと検討をはじめた。どこが良いだろう。まさか最終学歴が変わるなどとは想像もしなかった。
・いや、実は2013年は1年ほど仕事を休んで育児をしようとしていたのだよ、俺は。予定変更することにしよう。学費は200~500万円のあいだ。安くはない。それに、この数日前に届いた住民税支払通知書がかなりの高額だったので、財政的に大丈夫かという疑問はあるが……。思いついたときに行動せねばならない。
・キャリア構築戦略など、結局は後付けの理屈にすぎない(たぶん)。
■6月X日(火)■
・会社をやっていると、毎日の出費に敏感にならざるをえない。ろくでもない働きしかしていないひとにたいしても(失礼!)、決まった額を支払わねばならない。本人はけっこうがんばったつもりでも、支払う側からすると「当然の働き」にすぎないことは多い。
・ロバートキヨサキ氏しかり、金森重樹さんしかり、「労働者と雇用者には天と地ほどの違いがある」といった。これはたしかに超えることのできない壁だ。労働者は雇用者の思考法を想像はできても、雇用者になりきることはできない。ぼくは「起業こそが素晴らしい」という意見には賛成できない。また、「サラリーマンだけが気楽な商売だ」という現状維持にも賛成できない。ときに起業家になったり、ときに雇用される側になったりと、その両方を行き来できる社会のほうが健全だと思う。
・ぼくは常にこう思っている。「世の中は俺と同じアンポンタンがほとんどだ。なのに、みんながそれなりに生きているではないか。きっと俺がアンポンタンでも、食っていくくらいはできるだろう」と。そういえば、就職活動のころ、面接官を見て「ああ、このひとは凄いんだろうなあ」と思ったものだけれど、いま見たらぼくと同じアンポンタンが面接官をやっているわけだ。
・本当に優秀な学生が就職試験に落ちることもあるよね。だけど、ほんとうに才能があったら、近いうちに(10年以内)に認められる。だから最初はどこでもいいから会社に潜り込めば良い。最近はそう思っている。
・サラリーマンが働くことについて見つめなおす際に役立つ基本文献は(絶版のものもあるがご容赦を)、「ワーキングフリー」「キャリアの教科書」「フリーエージェント社会の到来」だろうな。もはや三冊とも古典。
・それにしても「ワーキングフリー」のなかで、サラリーマンの歴史が200年しかないことを知り、なぜその程度のものに俺は縛られているのだろう、と驚いたのは社会人2年目のことだったか。
■6月X日(水)■
・朝から広島に向かう。最近はお客さんの広島率が高いため、よく出向く。飛行機のなかで読む本をいつも迷う。「脱資本主義宣言」を読む。鶴見済さんの12年ぶりの新作だったためにあまりに期待して読んだ……。しかし……。やはり左系のライターは、テーマが脱資本主義とか環境とか反政府デモとかになっちゃうんだなあ……。次に菊地成孔さんの「アフロ・ディズニー2」。これは面白い。音楽家なのに文章も上手いし、話しも面白いし……。日本の音楽界では、ひさびさの注目人物。次に「評伝 ナンシー関」。これも圧巻。中村うさぎさんも、マツコ・デラックスさんも、結局はナンシー関さんの影響下にあるんじゃないかなあ。
■6月X日(木)■
・政局のニュースが続く。消費税について、野田総理が自民党と公明党の賛成を取り付けた、とか、小沢さんは反対するだろうとか(実際に反対し、離党することになった)。くだらない。誰が何を言ったとか、どう徒党を組むとか、くだらない。それよりも、消費税の増税の根源的な意味を問うべきではないか。なぜ8%なのか。6%でも7%でもなく、8%である理由を聞いたことがない。100兆円の国家予算にたいして、消費税を8%にしたところで焼け石に水だ。消費税20%なら、(反対するけど)それで財政再建するというなら理屈はわかる。ただ、なぜ8%なのか? 経済学者のひとに聞いても、やはりイマイチわからない。
・次の選挙では、みんなはどこに投票するのだろう。賛成か反対かの二項対立が、さもすべてのように喧伝されている。しかし、政治的な正解は常に第三の道、中道にあるはずだ。
・政治ネタは止めたほうがよいですね。では止めよう。
・この日は、ひたすら資料作り。100枚くらいの資料を二日で作成することになった。ああ、肩がこる。
■6月X日(金)■
・松尾昭仁さんの「土日社長になっていきなり年収+96万円稼ぐ法」の出版記念講演にいく。突然、壇上に呼ばれて話をする。疲れた。「独立して上手くやる方法」について話せと……。一つの答えがあれば誰だってやっているわけで、簡単じゃないよね……。
・かつて、神田昌典さんはコンサルタントの年収限界は2000万円だといっていた。それを聞いたときは、ほんとうかよ、と思った。でも、ほんとうだろう。自ら動く仕事であれば、月に150~200万円稼ぐのがせいぜいだ。
・その2000万円を超えようと思えば、(1)大手コンサル企業の役員クラスになる (2)商品を販売する (3)コンサル企業のオーナーになる しかない。(1)大手コンサルの役員かパートナークラスになれば3000万円くらい。(2)(3)であれば、商品の販売量や雇う人数しだいでいくらでも変わる。つまり、(1)はしょせんサラリーマンであり、(2)(3)は自営業者に近い。当然、リスクは大きくなるがリターンも大きくなるというわけだ。
・この話を聞いて、サラリーマンの反応は二つにわかれるだろう。「600~900万円ていどの現状年収でいいや」と思う人と「年収が2000万円以上、うまくいけば3000万円を超えるのであれば、チャレンジするのも悪くない」と思う人と。もちろん、どちらかのみが正解ではない。人それぞれの生き方だ。
・まあ、しかし、俺はチャレンジを選ぶけどね。失敗してもなんとかなるだろう、と思っているから。それにそこらへんの社員よりは優秀だろうから、どこかには雇ってもらえるだろう……とも思うし……。
・講演会のあとは新刊の打ち合わせ。いまのうちに仕事をたくさんやっておこう。
<つづく、かもしれない>