グローバルバイヤーの英語術(牧野直哉)

先月、久々に長く海外に滞在しました。日本人はずっと私一人。出張先での仕事をこなしながら、日々英語でのコミュニケーションが億劫で無くなってゆくのを実感していました。以前このメルマガでも申し上げた「必要になってからやる」ことの実践です。帰国してからも、現地とのやりとりを続け、できるだけ今の状態をキープしたいと考えています。

繰り返し申し上げますが、英語は必要になってからやれば良い、そんなことをこのメールマガジンでもお伝えしました。英会話学校へ数十万円を支払うのであれば、月に数冊の読書のほうが有効であるとも述べました。事実、私はそれ以降いわゆる英語の勉強を全くやっていません。しかし必要になった場面では、これまで以上に英語に真剣に取り組んでいます。たとえば、辞書を開く機会は確実に増えました。必要な時に理解を深めることをおこなった結果、ボキャブラリーが増えたことも実感できました。そして帰国してこんな本に巡り会いました。

「日本人の9割に英語はいらない~英語業界のカモになるな!」

成毛 眞著 http://amzn.to/nUYJiS

本のオビには「英語ができてもバカはバカ。」とあります。私は思わず手に取りました。この本の章立てはこの通りとなっています。

第1章 本当に英語は必要なのか

第2章 英語を社内公用語にしてはいけない

第3章 本当の「学問」をしよう

第4章 日本の英語教育は日本人をダメにする

第5章 英会話を習うより、本を読め!

第6章 それでも英語を勉強したい人へ~成毛流英語学習法

この本を読んで、皆様にお伝えしたいポイントが二つあります。まず一つは、それでも1割、10%の日本人には英語は必要であるとの著者の主張です。題名だけで「あ、だから俺はその他大勢の90%に含まれるだろうから、英語はいらない」と捉えてしまうのは、いささか早計すぎます。バイヤー・調達購買の世界で生き残ってゆくためには、英語が必要な1割の人材であるべきだと考えています。過去の記事で、このメールマガジンの読者は、日本のバイヤーのトップ1%を対象にしている旨を書きました。経済活動のグローバリゼーション、円高にともなう日本人自らの手による産業の空洞化を踏まえても、トップ1%のバイヤーに英語は必須であることはいうまでもありません。

この本は「英語本」としては私の大好きな部類に入ります。というのも、お手にとっていただければわかりますが、英語本の割に英語表現がほとんどありません。1章では、どれほどの日本人に英語が必要なのかを説いています。3章では学問の重要性を、そして5章では読むべき本が12冊示されています。すべて日本語で書かれたものです。読むべき本の中には、こんなまさに英語本( http://amzn.to/pZ2szO )も含まれています。そのすべてが日本語で読むことが可能です。これらは日本人として海外で仕事をするための教養です。私が今回の滞在で一番困った質問はこんな内容でした。

「仏教と禅はどう違うんだ?」

こんなページ( http://bit.ly/o9RgiB )に助けられて、なんとか事なきを得ました。英語がどう堪能であるべきか。それは日本を語れる教養を兼ね備え、かつその教養を英語で表現する、それが一つの答えなのです。

今回の長期の滞在で実感したもう一つ。今回の訪問先は十数人のオフィスでしたので、おのずと全員の顔と名前が一致するようになりました。毎日のランチは、オフィス近くのレストランでとります。気がつけば同じオフィスでも毎日違う人と同じテーブルでランチを囲みます。ある日、一人が何かメモを私に見せました。それには、本人の名前がローマ字、ひらがな、カタカナそして当て字ですが漢字で明記されていました。同じテーブルだった残り二人にも、同じモノを作ってくれないかと頼まれたのです。たとえば私だったら、

Naoya

なおや

ナオヤ

直哉

こんな感じです。私は、わざとA4一枚に4行で収まるくらいの字の大きさで作成し、PDF化してメールで送りました。すると私の想像以上に喜ばれました。私は調子に乗って、そのオフィス全員分を作成しました。当て字にもなるべくポジティブな意味の漢字を使用して、それぞれの漢字の意味も伝えました。

そうやってやりとりを重ねていくと、さらにいろいろな質問が投げかけられます。すると、質問が質問を呼んで話が続く。食事が億劫で無くなります。そもそも日本とはユニークな国と写っているんでしょうね。そんなメリットを利用しないのはもったいない。今回のテーマである英語でのコミュニケーション能力も、日本と訪問先のイタリアは非常に似た状況であることがわかりました。学校で教育はおこなわれているけれども、コミュニケーションのできる人は非常にすくない。そんな日本との共通点も私には新鮮な発見だったのです。

もう一つ、私は英語について興味深いツールを手に入れました。人によっては「購入する意味が無い」と一刀両断されているiPhone4Sです。

5(ファイブ)の登場を期待していた方からすれば、4Sは期待はずれだったのかもしれません。しかし、今回の製品には「Siri」という本体操作のナビゲーション機能が追加されました。携帯電話に向かって話をすると、いろいろな対応をしてくれます。残念ながら日本語にはいまのところ未対応。対応言語は、ドイツ語、フランス語、英語はアメリカ、イギリス、オーストラリアの3種類で、合計五種類の言語に対応しています。

使い方はこうです。iPhoneのホームボタンを長押しすると”What can I help you?”の文字とマイクが表示されます。そこで自分の希望を話すのです。すると、携帯電話に搭載されたもっとも近い機能で答えるというモノです。「あなたの言っていることが理解できません」なんていわれるとヘコみます(笑)。でも、自分の話した英語が文字になって表現されるとうれしいのです。私はこんなことをSiriにお願いしてみました。

● I would like to go to New York

そのつぶやいた場所からニューヨークまでの海の上を歩く前提での所要日数とルートが示されました

● Sakaguchi-san

このメルマガの共著者である坂口さんへ発信を始めました。夜遅かったので、慌てて切りました(笑)

● I’m hungry

日本ではその質問に対応できないと回答されました。日本でのサポートが始まると、きっと最寄りのレストランを紹介してくれるんでしょう。ちょっと期待できます

● I love you

私はここにいていつもあなたをサポートします、なんて回答でした。

● I don’t like you

覚えておきます、と言われました。

これ以外にもいろいろな事をお願いしてみました。おもしろいのは、私の話した英語が文字で表現されることです。そして一応回答をくれることも……ただ理解できませんにはへこみますけどね。

「必要」で、かつ「おもしろさ」があるときに英語はやれば良いとすれば、気が楽になりませんか。でないと、続きませんしね。ぜひ、お試しください。

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