ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)

・バイヤーのためのサプライヤー工場の「見える化」の話をしようパート1

バイヤーは工場見学によく行く。しかし、その感想はかなり曖昧なものになりがちだ。「なんとなく生産性がよかったです」「なんとなく良さそうな工場でした」「なんとなく改善できそうでした」。どこまでいっても「なんとなく」から離れられないのである。

バイヤーは、つねに工場見学のとき、ノートとペンは持っているだろう。

このノートとペンを使って、バイヤーらしく、調達・購買部員らしく、工場の見える化ができないか。もっといえば、コスト削減に通じるようなネタが探せないか。

ここから話す内容は、私のオリジナル手法ではなく、リーン生産方式に基づく、工場の「見える化」手法である。ただ、この方法を知っておけば、工場見学のときに視覚的な把握ができるようになるし、コスト削減(VA/VE)のネタも探せるようになる。

ここで、まず覚えていただきたい「道具」がある。ノートとペンを持って工場の工程に行くことになるが、その際に四つの「道具」(書き方)を覚えていただきたいのだ。そして、これらの道具を使って描く手法を「バリューマップ」と呼んでいる。

1.バリューマップ四つの道具で工程を記載する

「工程ボックス」は読んでいただいてわかるとおり、工程名称や工程のメモを記載するものだ。

「工程データボックス」は、これも読んでお分かりのとおり、各種情報を記載してもらうものだ。

そして、さきほどの「工程ボックス」「工程データボックス」を書き、それを違う工程間を結ぶものがこの「棚卸ボックス」であり、「流通ボックス」だ。なお、「流通ボックス」は「流通線」と読み替えてもいい。

この四つの道具だ。

これをどう使うのだろうか。たとえば、こんな工程があったとしてほしい。

この工程は、さきほどのたった四つの道具によって、このようにノートに記載されるのだ。「棚卸」とは要するに、中間在庫と考えてほしい。あなたは、切断工程とバリ取り工程のあいだに12,000個の中間在庫が、そしてバリ取り工程と溶接工程のあいだに9,000個の中間在庫があることを、工場見学からあきらかにしたとしよう。

いきなり、工程が視覚化してきた。

2.サイクルタイム(加工時間)とリードタイム(工程リードタイム)を追加する

さらに、このあとに、サイクルタイムとリードタイムを追加しよう。サイクルタイムとは、加工の時間であり、リードタイムとはその工程から次の工程に何日かかって運ばれているかを示すものだ。

ここで、さらに上流と下流の情報を調べてみよう。「材料の搬入」と「出荷」を加えていこう。

書き方の要領は同じだ。材料が何日に一度運ばれてくるか、そして、製品が何日に一度出荷されるかを加えていけばいい。このサンプルでは、材料が10日に一度運ばれており、かつ出荷は4日に一度なされているとしている。そこまで加えると、こうなっていく。

工場の視覚化がより進んだ。あなたのノートには、上記のような図が出現したはずだ。できれば、実際に手を動かして書いてみてほしい。こうやって視覚化できるんだ、という感じをつかんでほしい。

さて、ここでいきなり驚きの事実がやってくる。上の図で、「生産リードタイム」というところがある(凸凹の凸のところだ)。これを合計すると、19日だ。それなのに、加工時間はわずか25秒だ。なんと、この工場は、たった25秒の実質加工時間のものに対して、19日ものリードタイムがかかっているのである!

工場を視覚化すると、いきなりコスト削減のアイディアが浮かんできそうだ。そして、これをいかに実際の改善に結びつけていくか。これは次回ご説明しよう。

<つづく>

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