調達部門改革論

はじめに申しておきますと、私がこれから述べる調達部門改革論について実現度は問わないでください。ただ、このところアイディアレベルとして考えていることです。

(1)調達部門分割論

よく設計部門などから「調達部門が望むような働きをしてくれないんだ」と聞きます。そこで、調達部門を二つにわけて、そのサービスレベルを競うのはどうでしょうか。たとえば、設計部門が半導体の使用を検討しているとすれば、第一購買部のA君を指名してもいいし、第二購買部のB君を指名してもいい。製品知識、選定、人間味、価格交渉から納期折衝にいたるまで、A君かB君のどちらかを決めます。社内なのにアウトソーシングのようになるわけです。

年間を通じて多くの指名を得た購買部が人員も増え、ボーナスもあがります。両部は負けないようにスキルを向上させていくのです。そしてしばらく経ったら、解体して、ふたたびランダムに人員をわける仕組みならどうでしょう。

こうすると、仕事は二重化するし、サプライヤも窓口が二つにわかれてややこしいのは間違いありません。しかし、工場のロボット化やRPAの導入などで余剰人員が増えるなか、競争原理を導入するメリットが大きいように思えてなりません。

(2)社内ルール完全無視製品の開発

よく日本企業から、「新しいことをやっても、組織のルールがあるから無理だ」と聞きます。サプライヤ工場監査の回数や、品質基準、開発プロセス。これほど激動の時代になっているのに、「ゆっくり」しているのです。しかし、ルールはルールで意味があります。お客へ最高の製品を提供するためにやってきた日本企業は、市場から高評価を得ました。

しかし、「これほんとうに重要か」と疑問に思う、あまりにも多くのルールがあるのも事実。実際にアジア企業の開発スピードは、日本企業のそれよりも遥かに速い。

だから、社内ルールを完全に無視した製品を作るチームを治外法権として創出すればいい、という提案です。サプライヤの工場監査もしない、品質基準も最低限にし、とりあえず作って市場の反応を見る。こうすれば、既存のルールがほんとうに重要なのか、無意味だったかがわかるはずです。

もちろん、生命や公害につながる場合は難しいでしょうが、あまりにも多くのルールに拘泥されているように思えてなりません。

(3)価格ヒアリングシステム構築

いまも昔も、ずっと調達部のテーマは「この得体のしれない製品はいくらが妥当だ」という問題です。サプライヤから見積書をもらっても、妥当性が確認できない。おなじものを供給できる他社もいない。類似品も調達したことがない。

ただ、現実的には、ほんとうに世界中を探しても1社しかできない製品はさほど多くありません。ピッタリではなくても、類似品があるはずです。なぜならば、代替品がないということは、そのサプライヤが倒産したら、みなさんも供給できずに倒産してしまう、ということですよね。どこかにはなんらかの類似、代替物があるはずです。

そこで、世界中のサプライヤへ「おたくだったら、いくらで出しますか」と訊けるシステムを構築すればいい。イメージは、公共調達のように、仕様書を公開し、サプライヤが自発的に集まるイメージです。そのサプライヤにすると、新たな新規顧客につながる可能性はありますし、さらに答えるだけで1万円もらえるとします。

この1万円は適当な数で、別に2万円でもかまいません。答えてあげようと思えばいくらでも。そうすれば最強のデータベースもできあがります。

もっとも、ほんとうにそのサプライヤが供給できるのかはなんらかの方法で確認する必要があります。また、日本企業は情報にお金を払わないのでハードルではあります。

以上、私案としての調達部門分割論でした。

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