きかんしゃトーマスと調達リスク

あまりに面白い動画があります。きかんしゃトーマスの歌です。そのタイトルもずばり「じこはおこるさ」。YouTube等で見られます。残念ながら、リンクを貼ってしまうと、このメールが届かない可能性があるので、各自ご検索ください。タイトル通り、事故を歌ったもので、あまりに美しく、ギャグなのかわからず、つい爆笑してしまいます。

「じこがほら、おきるよ、いきなりくる」
「ちょうしのって、やってると、バチがあたる」
「じこは、おきるものさ」

たとえば、JRが自社動画で「事故は起きるさ」と脱線アニメを作ったらどうでしょうか。非難轟々のはずです。大炎上するでしょう。しかし、この動画が笑えるのは、おそらくある種のホンネを高らかに歌ってくれているからです。現在、企業はリスクマネジメントを徹底しようとしています。そして、完璧なリスク対策を求められています。まるで巨大隕石が地球にぶつかろうとも生産を継続できるような。

しかし、心のなかでは「いえないけれど、完璧な対策なんて打てないよ」と思っているはずです。そこをついているのでトーマスの「じこはおこるさ」は、きっと私たちに奇妙な笑いを誘うのでしょう。しかも、この歌では、「じこがもしおきたら、おちこまないで、うまくやれるように、がんばろうよ」と締めています。

以前、完璧なリスク対策などあるはずはないので、重要なのは災害が起きたあとの事後策を練ることだ、と私はさまざまなメディアで発信しました。リスクマネジメントを100点に近づける努力も必要でしょうが、ポスト災害マネジメントのほうも重要なのです。言い方を変えれば、まさに「じこがもしおきたら、おちこまないで、うまくやれるように、がんばろうよ」です。

先日、ロバート・ゲラ―氏(元東京大教授)が「地震は予知できないと日本政府は認めよ」と発言し物議をかもしました。しかし、これは、今さら感が漂います。というのも、そんなのはわかっていながら、学者たちは研究を進めているのです。火山の予知もできませんが、これは、研究するには標本数(サンプルデータ)が少なすぎるからです。地球の誕生から比較すると、データ観測の数は微々たるものです。たとえば、火山の噴火を予知する際、同一火山で1500くらいの噴火データがあればよいとされますが、現在ではたった数例しか収集できていません。これは学者たちの責任ではなく、どうしようもありません。

ただ、とはいえ、ゲラ―氏が述べた通り、災害は予知できないのは事実です。さらにリスク対策も限界があります。ただしサプライチェーンは進化させねばならない。今回、メールマガジンでこのテーマをとりあげたのは、現在、北朝鮮リスクはやや和らいだようにも思われているからです。ただ、この機会だからこそ、災害発生後のバックアッププランを再検討するタイミングではないでしょうか。

安堵と同時に、将来の対策を考える時間をもちたいものです。

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