「値上げ」が武器になる時代をどう凌ぐか

昨年、パンメーカーの株価が15%高くなりました。それ自体はさほど騒ぐ内容ではありません。問題は値上げの材料です。好調な業績を示す決算発表があったわけでもなく、従来のパンの常識を覆すような画期的な新製品の発表があったわけでもありません。平均して3.8%、70品目の値上げを発表したのです。投資家は、値上げして原材料費や物流費、人件費アップを吸収し、業績の改善を期待しているのです。

 

パンメーカー以外にも、クリーニングや建築資材といったサービスや商品の値上げが株価上昇の材料になっています。値上げの決断で消費者から嫌気を刺されるかもしれませんが、株主からは好感を持って受け入れられているのです。一方で、効率的なサプライチェーンを構築しているからこそ値上げに慎重な企業は、逆に株価が振るわない、そんな結果もでています。こういった風潮には、バイヤーとしても非常に気になります。

 

というのも、99%のバイヤーはコストダウンの方法は知っていても、値上げ要求に対してどのように対応するか、その方法論は長年のデフレ時代も手伝って、そのノウハウを知りません。したがって、サプライヤーからの値上げ要求への対応は、そのまま大きな不満を抱えつつ受け入れるか要求を無視する高圧的な対応の「二極分化」しているのです。

 

商品やサービスの価格の値上げが武器になるのであれば、まず営業部門が顧客の販売価格の値上げに取り組むべきです。顧客のコストダウン要求の代弁者のような営業パーソンは必要ないですよね。営業パーソンは1円でも高く売ってくるのが仕事です。今まで散々、デフレ時代だ、コストダウンだと社内に向かって声を大にしてきた営業部門の真価が問われる時代になったといえます。

 

そしてもう一つ、調達・購買部門にとっても正念場です。これだけ世の中で実際のコストが上昇し、価格設定にもプラスサイドへの追い風が吹く中、サプライヤーからの購入価格をどのように設定するかは、バイヤーの腕の見せ所です。サプライヤーの値上げ要求にどのように対応して、自らの業績を高めるか。こんなノウハウの追求をやっている会社もないでしょうね。なぜなら、値上げは調達・購買部門にとって忌み嫌うものですから。しかし、そんな忌み嫌う「値上げ」に正面から立ち向かわなければならない時代になりました。さて、どうしましょうか。

今月値上げ対応セミナーを開催しますので、ぜひおいでください。おもしろいですよ。

値上げ要求を受け入れる/拒否する以外の選択肢を獲得し有利な交渉を進める 「値上げ要求」対策セミナー(講師:牧野直哉)

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