連載22回目「購買はモノを買ってXXを売る」~ある業種の視点で調達・購買業務を活性化する その5

今回は、サービスのマーケティング・ミックスを基に、ここまでに述べた「サービス・マネジメント・システム」等の考え方も参考にして、調達・購買部門が提供するサービスを高める方法をなるべく具体的に考えてみたいとおもいます。

1.サービスのマーケティング・ミックス

このシリースのその2で述べたように、マーケティング・ミックスとは、販売活動に関連して決定しておくべき事項のことで、標的としている市場(顧客)から好ましい反応を得るための要素の組み合わせです。サービス業では以下の通り7つあります。

① サービス商品 例)サービス品質、品揃え、ブランド
② 場所 例)立地、販売拠点
③ 販売促進 例)広告、口コミ、ロゴマーク、ユニフォーム
④ 価格 例)価格水準、差別化、割引
⑤ 人材 例)従業員の雇用・訓練・動機づけ・報酬、価値観
⑥ 物的環境要素 例)施設デザイン、備品・道具、レポート・カード
⑦ 提供過程 例)サービス提供の方法、標準化・個客化

調達・購買部門のサービス活動(他部門への調達・購買サービス提供や、会社の顧客に向けての他部門との連携活動)でもこれらの7つのマーケティング・ミックスを意識して、業務水準・品質を高めてゆくことができます。この7つのうち、ここでは調達・購買サービス提供で、より重要と思われる「販売促進」、「物的環境要素」と「提供過程」の3つについて考察します。

2.調達・購買部門における3つのマーケティング・ミックスの展開方法

目的達成の具体的展開方法の原則は以下の通りです。パートナー部門、連携の目的にしたがって、それぞれの手段の相乗効果がでるように手段の展開方法を策定することが必要です。

(1)販売促進
この販売促進は、調達・購買活動では連携促進と言い換えることもできます。調達・購買連携は調達・購買部門が、会社顧客の満足を念頭にイニシアチブを取り続けることにより初めて認識できる結果を出すことができます。このためには、調達・購買部門は、連携のプロセスの品質を向上させるよう意識して、他の部門から調達・購買の専門性への高い評価を得るように心がけることが重要となります。

調達・購買のメンバーは他の部門のメンバーから良い評価・評判がたつように自己の持つスキル・知識の発揮・アピール、ならびに共感性の高いコミュニケーションを行わなければなりません。また、調達・購買部門の活動に満足だった場合より、不満を持った場合の方がより多くの人へ話をする傾向があると言われています。このことを認識して、不満を抱かせない連携活動を行い、苦情が出たときには迅速な対応をこころがければ、結果として調達・購買部門やそこで働く人たちの評判・評価を高めることになります。

(2)提供過程

このシリースのその2で述べたように、サービス業務の品質は、結果だけではなく、過程も重要です。調達・購買の活動では、この提供過程での共感・迅速な対応が品質を高める面で重要です。パートナー部門とそこの人たちの現状などを理解した上での気配り、連携をする人の心・気持ちへの感受性・共感力、そして問い合わせやミーティングのフォロー事項の迅速な回答・対応などです。

調達・購買パーソンの通常の活動においては、取引先が、主なコンタクトです。取引先の人たちが、売る立場上、気配りをするので、調達・購買パーソンは感受性、気配りを育む機会には恵まれないことが多いといえます。そのため、調達・購買パーソンは意識して、この気配りや感受性・共感力を働かせる努力をすることが大切なのです。日頃から、この感受性・共感力を良く働かせれば、連携などをするパートナー部門の人達への共感性の高い、良いコミュニケーションが可能となり、提供過程でのサービス品質が高くなります。

(3)物的環境要素

具体的には、調達・購買部門のオフィスにある掲示・展示物等のことです。製品開発・設計部門には、測定器があり技術関連の張り紙があります。生産部門でも、諸々の機器やそこで働く人たちの技術・資格水準を示す張り紙などがあります。調達・購買部門も、このようなオフィス設計をして、連携部門のパートナーが調達・購買部門に来たときに調達・購買の専門性を印象付ける工夫が必要です。例えば、部門内に専門書を置いたり、掲示物を目立つようにしたり、VAの成果がでた製品を展示するなどがあります。これが、相手から調達・購買部門のパートナーへの信頼感をもたせるのに役立ちます。

調達・購買の仕事をサービス業の視点から理解して、サービス業の特性を生かした調達・購買業務での活性化の具体策を述べました。今回で、このシリーズは終わりとなります。次回からは、新しいシリーズとして、調達・購買のブランドについて考えます。

著者プロフィール

西河原勉(にしがはら・つとむ)

調達・購買と経営のコンサルタントで、製造業の経営計画策定支援、コスト削減支援、サービス業の経営計画策定支援、マーケティング展開支援、埼玉県中小企業診断協会正会員の中小企業診断士

総合電機メーカーと自動車部品メーカーで合計26年間、開発購買等さまざまな調達・購買業務を経験

・著作:調達・購買パワーアップ読本(同友館)、資材調達・購買機能の改革(経営ソフトリサーチ社の会員用経営情報)

あわせて読みたい