芸人とコンサルタント
田崎健太さんの傑作。自分の体を売り物にしているひとは必ず読んだほうがいい。モノではなく、ヒトを売り物にする際、何が最高で、何が問題か。芸人の徹底した取材を通して描かれていく。
会社員だったら安定しているかもしれない。でも芸人は、運もあるし、時流もあるなかで、自分自身を売っていかねばならない。もちろん困難がつきまとう。しかし、これは、まさに私のコンサルタント業界もそうだと思う。
コンサルタントはとにかく「あなたが面白いから、指導してほしい」といわせなければならない。そこには理屈もあるが、運もあるし、時流もある。誰しもがコンサルタントの優劣を決めきれないなかで、とにかく「誰かの一位」になる必要がある。
きっと、コンサルタントとして悩んでいるひとには一読の価値がある。そして、純粋に芸人論として読んでも面白い。きっとテレビに呼ばれたい文化人が読んでも、面白いんじゃないだろうか。そこには、テレビに呼ばれる人と、呼ばれない人との乖離が描かれているから。
ところで、私が感心したのは、著者が芸人の過去を描くのに慎重であること。芸人は簡単にいえば、過去を誇張する。それに、そもそも誇張どころか、まったくの嘘かもしれない。しかし、芸人から聞いた話を元に描いていくしかない、しかも限られた時間と予算のなかで。その制約が、このノンフィクションに奇妙な魅力を与えている。
私は芸人論をかなり読んでいる。しかし、同書が面白かったのは、その点にもある。