5-(5)-1 サプライヤーの評価方法<基礎知識>

バイヤーは担当するサプライヤーに対して、出資やリストラクチャリング、ときにはM&Aを視野に入れた検討が必要になるときがあります。その際には、サプライヤーという一つの企業を評価する必要があり、「企業価値」の考えを身に付けておかねばなりません。

企業価値とは、そのサプライヤーをプロジェクトの集合体とみなして、それらがどれだけの経済的価値を持つかを表現したものです。具体的には、そのサプライヤーが生み出す利益(フリーキャッシュフロー)を、その元手となる資本を調達するためのコスト(資本コスト)で割り引いて計算します。

・フリーキャッシュフロー(FCF)=税引後営業利益+減価償却費-投資

・WACC(資本コスト)=clip_image002×(1-T)×clip_image004clip_image006×clip_image008
(D=長期負債の時価、E=株主資本の時価、T=実効税率、clip_image004[1]=負債の利子率、
clip_image008[1]=株主資本コスト)

・企業価値:現在価値(PV)=clip_image010

なにやら数式ばかりになってしまいました。

最後の現在価値とは、将来生み出すであろうキャッシュが、まさに今の時点(現時点)ではどれくらいの価値があるのかを見るものです。簡単に言えば、「稼ぐであろう金を、リスクで割り引く」というものです。WACCとは、金を貸してくれた人(債権者)が要求する利回りと、出資してくれた株主が要求する利回りの合計です。当然、FCFが多いほどよく、WACCが少ないほどよいことになります。

上場企業であれば、各種公開情報を使うことができますが、非上場企業であればそうはいきません。その場合は業界標準値を使用し代替することになります。

また、上場企業に対して、PER(株価収益率=clip_image012clip_image014)を使用して株主資本の市場価値を推測しようとする考えもあり、某有名ファンドもこの手法で買収価格を求めているように報じられましたが、これはあまりに雑すぎて本当にプロがこの方法で買収価格を決めているとは思えません。株価はすぐに変わるものだからです。一つの評価項目にはなるのでしょうが。

バイヤーは、サプライヤー戦略上、出資等によって子会社化を目論むときがあります。当然、調達・購買部だけで決める問題ではありませんが、サプライヤー窓口としてしっかりとした理論を持って社内外の交渉にあたることが大切です。
無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい