4-(5)-3 納期の確保「納期の確保のために」

サプライヤーの生産と自社の生産を同期させているのは自動車メーカーのような超大手企業だけです。その他多くの企業のバイヤーは、納期調整に奔走しながら、なんとか自社の生産に間に合わせています。

納期の確保に絶対的な改善方法はありません。製造業はお客からの注文を基準として動かざるを得ず、どうしても短期間の生産が生じてしまうからです。あるいは、サプライヤーにおいても、生産が込み合っていたり、不可測な事態に見舞われ生産が遅れたりすることがあるからです。安全在庫を過剰に持つという手段もありますが、それは不良資産の拡大にもつながります。

そのような前提に立てば、納期遅れを完全に予防することはできません。当然、入念な生産計画を立て、無理のない発注を心がけることは必要です。しかし、できる限りのことを行った上で、柔軟にサプライヤーの納期に合わせ調整してゆくことも大切です。

日ごろ、生産管理部門とバイヤーは情報交換を密にすることが求められます。納入期日が遅れそうだった場合、これだけ生産システムが発達した現在であっても、結局のところ生産を上手く調整できるかどうかは社内の関係部署とバイヤーの「人としてのつながり」に尽きるということを忘れてはいけません。

ただし、社内の各部門を動かして調整してもらうにしても、最低限下記のことをバイヤーが確実に実施していることが必須となります。私は前述の例のようなことも少なくありませんでしたが、このようなことを確実に行ってからは、だいぶ少なくなりました。

(1) サプライヤーに対する納期遅延防止の意識付け

(2) 納期遅れの原因の追究

(3) 納期遵守サプライヤーへの謝辞

たったこれだけのことです。

(1) について。多くの企業はサプライヤーと取引基本契約書を結んでいます。この中には、「発注内容に異議がある場合は○日以内に申し入れる」という条項がある場合が多いはずです。発注内容には納入期日が記載されているはずですから、サプライヤーが何も言って来ずに納入遅延をしてしまった場合は契約違反と言うことができます。もちろん、杓子定規に主張することはいけませんが、契約の遵守をサプライヤーに認識させるべきです。調達・購買部門によっては、商談室に納期遵守ワーストサプライヤーの一覧表を「見せしめ」として貼っているところもあります。

(2) サプライヤー工場が必死に生産してくれても遅れる場合は仕方がありません。しかし、十分な納入期日を確保していたにも関わらず、納期遅延を引き起こす場合は工程監査も含めた厳重な原因追求が必要です。私の経験した例では、工場内の生産指示がむちゃくちゃであった例がほとんどです。一社だけ、営業マンが自社工場に発注することを2ヶ月間放置してしまうという例もありましたが。

(3) 無理をお願いし、希望通り納入してもらったときは事後のお礼が必要です。バイヤーはどうしても立場上、サプライヤーに対して高圧的な態度に出てしまうことが多いでしょう。依頼するだけで、何のお礼も言えないバイヤーに対しては必ず長期的にサプライヤーの協力度が落ちてきます。メールならば5分もかかりません。ちなみに、私は無理な注文を聞いてもらうたびにサプライヤー工場の担当者にお礼状を出していました。すると、次回行ったときに、そのお礼状が額に飾られていたことがあります。

納期の確保は「できて当たり前。できなければ評価が下がる」という調達・購買部門が少なくありません。通常は±ゼロ、遅れればマイナス評価、というわけです。これではバイヤーのモチベーションが上がるはずもありません。

バイヤー個人の問題ではなく、このような評価制度も変える必要があります。バイヤーとしては、当然生産の安定のためにサプライヤーや社内と良好な関係を築く。同時に、バイヤーへの評価としては、納期遅延によるマイナス評価を止め、バイヤーがどれだけ納期遅延を防ごうとしているかの努力をプラス評価してゆく。これが必要です。

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