2-(7)-3 調達・購買の課題とは何か「調達・購買の課題を超えて」

私は冒頭で、調達・購買の課題は、(1)マネジメントプロセスが定着していない (2)ノウハウの伝承が行われていない (3)人材の育成が体系だって行われていない (4)情報が共有化されていない (5)個人評価が明確化されていない こういうことだと書きました。仕事自体が属人化しているために、全体としてまとめることができていないというわけです。

組織への処方箋は企業全体で考えてもらうとして、バイヤー個人の処方箋として次を挙げたいと思います。

・ 「代替性のなさ」がバイヤーの生きがいの本質

・ 「代替性のなさ」を獲得するために必要なことは主体性

私は「下が育たないんだよね。サプライヤーさんとの交渉も最後は私がやっちゃうし、他部門との調整も・・・」というボヤキを中堅バイヤーから何回も聞いたことがあります。同時に「下が育たないんだよね」とボヤいているにも関わらず、あの満足感に包まれた顔は何だろうかという疑問も持ってきました。

そのボヤキの原因はもちろん「下の人に任せないから」です。なぜ自分でやってしまうのか。なぜなら人は「代替性のなさ」が生きがいの本質だからです。「あの人ではなく自分にしかできないこと」。これだけを求めてさまよっているようなものですから、簡単に「自分にしかできないこと」を捨てることはできません。

だから先輩バイヤーは「下が育たない」と言いながらも、満足しながらその「自分にしかできない交渉や他部門との調整」をやり続けるのです。若手バイヤーはまず何よりもこの構造を理解せねばなりません。普通にやっていては、おいしく難しい仕事は先輩に流れるようになっているのです。

ではどうしたらよいか?簡単です。自分に指名で仕事が舞い込むようにすればよいのです。

世の中には法則があります。「現場にいる人しか知らない、貴重な情報がある。優秀な人は偉くなる。偉くなると現場に行けない。だから、偉い人は貴重な情報を知らない」。

上司が自分の仕事を奪おうとしたら、自分しか知り得ない情報を出せばいいのです。担当の自分しか知らない情報。どんな小さなことでも構いません。営業マンのこと、生産現場のこと、新製品のこと、アロケーションのこと、日々向き合っているサプライヤーの情報を社内に発信します。それも高速で。

そして、「こういうことだったら自分に聞いてください」と言う(言ってしまいます。本当に言ってしまうのです)。私の場合、幸運にもこの策が成功し、他部門長まで私に問い合わせをしてくれるまでになりました。

最終的な判断が必要なときに、毎回上司に頼ってしまうバイヤーがいます。自分で交渉できなかったときは上司に解決してもらって一丁あがり、としてしまうバイヤーがいます。 他部門から自分ではなく上司に相談が行くことを「仕事が減った」と喜んでしまうバイヤーがいます。バイヤーはこれらのことをずっとずっと恥かしいと思っていなくてはいけません。現場の物事を一番知っている自分ではなく、他者を頼りにする部外者いることを、ずっとずっと恥かしく思っていなければいけないのです。

組織の問題をあげつらっても個人の課題解決とはなりません。マネジメントプロセスや教育体系が成立していないかもしれない。だけど、そんな苦情を言っている間にバイヤー個人としてどうするかを考えた方がよいに決まっています。

バイヤーにとって重要なのは、現場で学ぶことです。そして、自分しかできない「何か」を育てることです。情報を社内に発信することです。自分で決断することです。自分で責任をもってやり遂げるということです。自分の価値を上げることです。

スキルや知識があっても、上司や他者(他部門)へ依存し続けていれば、誰からも信用されません。自部門の中で評価されることもないでしょう。一人一人が、真剣になって自分の特性を活かした「調達・購買」を考えたときに、何かが変わります。

いや、変えましょう。今すぐに。

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