あまりに、あまりに、あまりに、奇妙なサプライヤ倒産の話(坂口孝則)
わたしたち未来調達研究所株式会社は、いわゆる後株(あとかぶ)です。それにたいして、前株(まえかぶ)の会社もあります。ところでみなさん、前株と後株でいえば、全体の倒産に占める前株の比率があまりに高いことを知っていましたか。倒産の74%にもいたります。くわえて、もっとも倒産する企業は、頭文字「ア」の名前のところです。この奇妙な法則を知っていましたか。実際に、私が紹介した内容が書かれたレポートがあります。
ここでわざと話を変えてみます。
このところ、若者の海外離れについて語られます。若者が海外に行かなくなった、と。これはほんとうなのでしょうか。海外旅行についても事実を確認してみましょう。そうすると、平成26年(2014年)に1690万人が出国していたところ、平成27年(2015年)には1621万人で、たしかに減っています。20代の若者の絶対数を見てみると、同比較で約270万人だったものが、254万人とおなじく減っているように見えます。
この数字だけを見ると、6%も減少しているように見えます。
ただ、当たり前ですが、分母を見てみなければなりません。総務省の「人口推計」によると、2014年に20代は約1290万人いるとされますが、2015年には1260万人に減少しています。これはもちろん少子化のせいです。そこで、旅行者の比率を計算してみますと、約20%とほぼ変わりません。母数を考えない比較は無意味だとわかります。むしろ、親たちが援助を渋っているなか、なかなか海外に目を向けているな、とすら評価できます。
ところで、冷静に付け加えると、現代の数字は、いまのオヤジ世代が若者だった80年代中後半と比較しても、若者の出国率はきわめて高いのだと指摘しておきます。その当時は20代の若者出国率は10%台にとどまっています。だから冷静に見れば、若者が海外離れだとかボヤいている大人たちのほうがはるかに内向き志向が高かったわけですね。
話を戻します。
私は、<前株と後株でいえば、全体の倒産に占める前株の比率があまりに高いことを知っていましたか。くわえて、もっとも倒産する企業は、頭文字「ア」の名前のところです>と書きました。これを素直に頷いてはいけません。レポートがあると説明しましたが、これは注意の必要なレポートなのです。表面の数字だけ見てはいけません。母数を知ることが重要です。
というのは、そもそも前株の会社数が多いのです。その比率でいえば、倒産比率とさほど変わりません。数が多いから倒産する数も多い、というていどの話です。さらに、頭文字「ア」の企業も、やはりもともと多いのです。なぜかというと、もともと電話帳の先頭に載ったほうが有利だと信じられていたからです。母数を知らねば判断はできない、というリテラシーを問う話です。
レポートを面白がるのは重要です。しかし、その後に、俗説と突飛な話は疑ってみる。この姿勢こそ世間に惑わされない、強いビジネスパーソンを創り出すのではないかと思うのです。